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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【2019年1月29日】 学術講演会「中世神話としての『諸神本懐集』」

開催日時
2019年1月29日(火) 16:45~18:15
開催場所
龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
講演者

〔開催報告〕

吉田唯氏

 

中世の『日本書紀』註釈や、両部・山王・吉田神道に関する神話や教説から成る歴史概念が、「中世神話」である。本講演は、この中世神話の視点から存覚(1290-1373)『諸神本懐集』を検討し、真宗史ではなく、日本思想史の中に同書を位置付ける試みといえる。具体的には、『諸神本懐集』を中心とする真宗聖教の中で、「神祇」がどのように捉えられたか、アマテラスとスサノオの扱いを中心に考察がなされた。

第一に、本講演は以下の章から成る。

1.「国譲り神話の比較」(『諸神本懐集』と『神本地之事』)

2. 日天子・月天子について

3.『諸神本懐集』内のアマテラス像

4.  室町期までの祖師イメージ

まとめ

5. 真名本『諸神本懐集』との比較

仮名本にのみ見られる記事

真名本にのみ見られる記事

 

以下、各章の概要を述べる。

 

  1. 「国譲り神話の比較」(『諸神本懐集』と『神本地之事』)

本章では、『諸神本懐集』と『神本地之事』それぞれの「国譲り神話」の記事を比較し、二書の関係性について再考が試みられた。

先行研究では、『諸神本懐集』は『神本地之事』の抄出としばしば主張される、しかし、二書の「国譲り神話」を比較すると、内容と叙述の形式の両面で相違が目立ち、したがって、『神本地之事』を『諸神本懐集』の底本とはいいがたい。付言すると、二書の差異は、アマテラスとスサノオの性格描写にも確認できる。

 

  1. 日天子・月天子について

本章では、存覚『諸神本懐集』に明らかにされる日天子・月天子の性質について考察が試みられた。

第一に、『諸神本懐集』の中には、次のような諸尊・諸神間の対応関係が示される。

①日神=アマテラス=日天子=観音=日本国の主=宝応声菩薩、

②月神=スサノオ=月天子=勢至=日本国の神の親=宝吉祥菩薩、

それによると、日天子は一方でアマテラス、他方で宝応声菩薩に相応すると説かれる。月天子は一方でスサノオ、他方で宝吉祥菩薩に相応すると説かれる。また『諸神本懐集』では、宝応声と宝吉祥の二菩薩は、阿弥陀の使いとされる。

以上の主張をまとめると、日天子と月天子は、アマテラスとスサノオの二神を阿弥陀仏に結び付け、浄土真宗の教えの中に取り込む媒介の役目を果たしたと考えられる。

 

  1. 『諸神本懐集』内のアマテラス像

本章では、『諸神本懐集』の「国譲り神話」記事に表されるアマテラス像を検討し、同神の性格について考察が試みられた。

『諸神本懐集』「国譲り神話」では、天岩戸にこもるアマテラスを「聊か幼児性を残すカミ」として描く一方で、そこからでた同神を「日本国の主」と評価する。このようなアマテラス=「日本国の主」という教説の背後には、天皇の存在が想定されていると思われるが、さらにその歴史的な背景として、親鸞の先祖、藤原氏(中臣氏)の先祖であるアメノコヤネが、かつてアマテラス=「日本国の主」に仕えたことがあり、一連の教説を通じて「神明を軽んじる」真宗イメージの払しょくをはかったとも推測される。

 

  1. 室町期までの祖師イメージ

本章では、室町時代までの祖師イメージということで、『恵信尼書状』や『法然伝記』の記述を取り上げ、真宗の祖師像について考察が試みられた。

結論からいえば、これら文献内の祖師の記述は、ある点で『諸神本懐集』と対照をなす。すなわち、前者では、親鸞や法然といった祖師と阿弥陀、観音、勢至の同体が説かれるが、アマテラス、スサノオといった神への言及は確認できない。逆に『諸神本懐集』では、上記三尊と神の同体を説くが、神と祖師の同体は説かない。換言すれば、神々は、『諸神本懐集』の中でこそ菩薩との同体を許されたが、その外では、それほど大きな影響力を持つことはなかった。

 

まとめ

まとめると、『諸神本懐集』を通じて、アマテラス、スサノオの二神、それら神への信仰は、真宗に導入された。無論、そこには他宗からの影響があったと考えられるが、ここで注意すべきは、神々自身の影響力も、あくまで限定的なものであったということである。すなわち、神々が、祖師や本尊阿弥陀と関係する、それらと同体視されることはなかった。その点に、真宗の神祇観の特質が確認できる。

 

  1. 真名本『諸神本懐集』との比較

本章では、先ず真名本『諸神本懐集』の書誌情報、先行研究の評価を確認し、引き続き、現存の仮名本と真名本の相違について紹介された。

 

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吉田唯(近畿大学非常勤講師、高野山大学密教文化研究所研究員)

 

中世神話としての『諸神本懐集』

 

司会:杉岡孝紀(龍谷大学農学部教授 世界仏教文化研究センター 親鸞浄土教総合研究班班長)

 

※一般聴衆歓迎。お気軽にお越しください。

 

問合先:龍谷大学白亜館3階共同研究室 075-343-3812 内線) 5832

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター親鸞浄土教総合研究班 真宗善本典籍研究プロジェクト『諸神本懐集』の研究班(代表:杉岡孝紀)
ポスター
中世神話としての『諸神本懐集』