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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】2019年10月4日(金)2018年度 沼田智秀仏教書籍優秀賞 受賞講演会を開催しました

開催日時
2019年10月4日(金)15:00-16:30
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

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沼田智秀仏教書籍優秀賞は、特に西欧における仏教研究の発展を支援するために、2009年に設立された。毎年、英語で執筆された仏教学術書の中から優秀な作品が選定されている。2018年度は、『A Yogācāra Buddhist Theory of Metaphor』 (オックスフォード大学出版、2018年)を上梓したRoy Tzohar氏(テルアビブ大学准教授)が受賞した。

 

2019年10月4日(金)、受賞を記念し、当センターではTzohar氏を招聘して「What Metaphors Mean and Do within Buddhist Philosophical Texts? A Yogacārā Perspective」と題した記念講演会を開催した。会では、特に初期唯識の哲学書の中に現れるメタファー(uapacāra)に焦点を置き、それが何を意味し、どのような意図のもとで使用されているのかについて考察された。

 

まず、Tzohar氏は「バーヒーカ人は牛だ」という表現を分析し、唯識の視点を説明された。バーヒーカ人が牛と喩えられるのは、屈強だが愚鈍であるという偏見からきている。ここで実際に語られているのは「人間」であり、「牛」ではない。つまり、人を牛と呼ぶことがメタファーたりえるのは、第一義的な対象物(人間)が類似の異なる対象(牛)でないときに限られる。Tzohar氏は、この不在性が唯識におけるメタファーを理解するために重要だと指摘する。その上で、唯識においては、不在性が全ての言語表現を特徴づけるものとみなされていると論じた。

 

6世紀の僧・安慧は註釈書の中で、メタファーは実際の物事についてではなく、意識の転変に関連して生まれ出るものだと主張した。自己や物事はすべて分別により作りだされており、実際は想像上のものでしかなく、究極的には存在しないのである。

 

またTzohar氏は、「全ての言葉は比喩的である」という安慧の主張に注目。これは、言葉は対象そのものではなく、対象が意識の転変の中に顕現するプロセスを語っていることを意味する。そして、言葉が因果関係の理解と結びついている点、その理解は発言者によって異なるという点に留意しなければならないと指摘した。凡人、高僧、仏菩薩では理解のレベルが違うため、物事を認識する能力や表現する正確さにも差があり、言葉のレベルが変わってくるのである。これは、全ての教えは手段でしかなく、それゆえ一様に世俗的で、実在性がないとする中観派と一線を画す主張である。この主張によって唯識派は、世俗の言葉によって真理を示すことはできないとしながらも、自らの哲学議論の有効性を正当化したのである。

 

さらにTzohar氏は、唯識の言語理解の重要性の一つとして、様々なレベルの者の対話を可能にした点を挙げた。上述のように、唯識では、教義は様々なレベルの者の言葉によって表現され、その正確さは発信者の認識レベルと深く関わっている。そのため唯識では、菩薩が非概念的な経験をすることと菩薩が六道世界の中で世俗的な言葉を使うことについての両立が可能となる。非概念的に本質を理解している者の使用する言語は、凡人の使用する言語とは異なり、より効果的に本質を語ることができる。このような唯識の思想に基づけば、悟りを開いた者と衆生が世界を共有することが可能となる。Tzohar氏は、この点が唯識における言語理解の中で最も重要な事項だと述べ、講演を締めくくった。

 

コメンテーターの桂紹隆氏(龍谷大学名誉教授・仏教伝道協会理事長)は、Tzhohar氏が不可知な真理の言語表現をめぐってメタファーに着目したことは過去にない斬新な視点であったと評価した。ただし、本来は「実在しないものが言語によって実在するかのように表現されること」を意味するuapacāraを、Tzohar氏が「メタファー」と翻訳したことには再考の必要があると指摘した。講演会ではその後もメタファーをめぐって活発な議論が交わされた。

 

講師のRoy Tzohar氏

 

コメンテーターの桂紹隆氏

 

 

司会の嵩満也氏(龍谷大学教授)

 

 

青木晴美(仏教伝道協会 常務理事)

 

 

会場の様子

 

 

 

 

 

 

 

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講 題: What Metaphors Mean and Do within Buddhist Philosophical Texts?: A Yogācāra Perspective
(仏教哲学書の中で比喩は何を意味し、どう働くのか?―唯識の視点から考える)

講演者: Roy Tzohar博士(テルアビブ大学 准教授)

 

コメンテーター:桂 紹隆(龍谷大学 名誉教授)

司 会:嵩 満也(龍谷大学 国際学部 教授)

 

※本講演会は一般公開、事前登録不要です。

※講演は英語で行われます。

 

【チラシ】(クリックで拡大)

 

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主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター
共催
公益財団法人仏教伝道協会
協力
龍谷大学アジア仏教文化研究センター
ポスター
【沼田賞2018】Roy Tzohar氏