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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】2019年12月11日(水)著書出版記念講演会「日・印仏教交流と仏教の近代化」

開催日時
2019年12月11日(水)17:00~19:00
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

Richard Jaffe氏(デューク大学教授)

 

2019年12月11日、デューク大学教授のRichard Jaffe氏による講演会「日・印仏教交流と仏教の近代化」を開催した。本講演会は、Jaffe氏の新著Seeking Sakyamuni: South Asia in the Formation of Modern Japanese Buddhism (The University of Chicago Press, 2019) の出版を記念して、当センターとアジア仏教文化研究センターが企画したものである。講演では、19世紀末から20世紀初頭にかけて、南方アジアが日本仏教との重要な接触域として、どう発展し、また日本との経済的交渉が、日本人の巡礼や仏教聖地における学びをどのように育んだかを中心に論じられた。以下、講演の概要である。

 

日本近代仏教史研究において、西洋世界との交流に関する研究が一定数存在するのに対して、アジアとの交流を題材とする研究は相対的に少ない。明治以降、多くの日本人僧侶がアジア諸国を旅した。この頃、日本では諸外国との貿易が盛んであり、それを可能にしたのが海運の発達である。定期船の存在は、僧侶の海外渡航も後押しした。インドやセイロン、シャムなど、仏教のルーツを求めた彼らの足跡は、遺された多くの旅行記などから知ることが出来る。

 

では、彼らの南方アジア歴訪の目的とは何だったのか。一つは仏跡に対する純粋な憧れである。そして、もう一つは大乗非仏説論を反証すべく、インドにおいて大乗仏教の正統性を発掘することだった。それはまさに、“釈尊を探す(Seeking Sakyamuni)”旅だったといえる。

 

実際、彼らの渡航先における関わり方は様々だった。例えば、北畠道龍のように、ヨーロッパ滞在を経てインドに1ヶ月ほど立ち寄っただけの場合もあった。他方、釈興然のように、スリランカの上座部寺院に長期間滞在して修行に励んだ者もいた。何れにしても、南方仏教(上座部仏教)との出会いは、単に個々人の体験に止まらなかった。帰国の際、多くの僧侶が釈尊像や経典、仏教美術などを持ち帰った。それは宗派色の強い当時の日本仏教に新たな息吹をもたらした。“釈尊正風の仏教伝来”は、保守的な僧侶らとの間に軋轢を生むなど、必ずしも万人に歓迎された訳ではない。しかし、仏教者のアジアとの交流によって、日本人は釈尊を再発見し、超宗派の連帯が促された。さらに、通称「モダン寺」と呼ばれる浄土真宗本願寺派神戸別院や、真宗信徒生命保険株式会社本館(現:伝道院)のような近代的建造物の建築もまた、南方仏教との出会いの産物と言っていいものである。こうした仏教的物質文化に触れた人々は、間接的に南方アジアに触れ、近代化された仏教へと誘われることとなった。

 

20世紀に入ると、南方アジア歴訪者の中から、山上曹源や木村龍寛、増田慈良のように、インドのコルカタ大学で講師を務める僧侶も誕生する。一方、スリランカ人僧侶が日本に滞在するなど、日本と南方仏教との交流は、新たな展開を見せるようになる。しかし、日本人がなぜ現地の大学で教鞭を執ることになったのか、彼らがインドにどのような影響を及ぼしたのかなど、不明な点は少なくない。これらについては今後、現地の資料や物質文化の調査によって詳らかにしていく必要がある。

 

Jaffe氏は上記内容に加え、タイより贈られた仏舎利をめぐる日本国内の動向や、パーリ語文献の翻訳出版などにも言及し、多様な観点から南方アジアと日本仏教の交流実態について論じた。質疑応答では、南方仏教側が日本人僧侶を通して大乗仏教をどのように捉えたのかについて質問があった。これに対してJaffe氏は、釈興然の例をとりあげつつ、当時、セイロンでは「東方仏教」「南方仏教」という理解はあったものの、大乗仏教に対する認知度は低かった実態を紹介した。その上で、釈興然の存在が、むしろ大乗仏教の実態を知る最初の契機になったと応答した。その後も多くの参加者と活発な議論が交わされた。

 

※都合により、司会は当センター博士研究員の菊川一道に変更となりました。

 

司会の菊川一道(当センター博士研究員)

 

Richard Jaffe氏(デューク大学)

 

会場の様子

 

会場の様子

 


 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)、龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)
ポスター
著書出版記念講演会「日・印仏教交流と仏教の近代化」