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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】2020年1月30日(木)研究セミナー「真宗私塾の僧侶養成―豊前の社会派僧侶誕生の舞台裏ー」

開催日時
2020年1月30日(木)17:00~18:30
開催場所
龍谷大学大宮学舎 西黌2階大会議室
講演者

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2020年1月30日、菊川一道(当センター博士研究員)による研究セミナー「真宗私塾の僧侶養成―豊前の社会派僧侶誕生の舞台裏」を開催した。菊川は、真宗系の私塾について、一般的な私塾の歴史的変遷や実態を踏まえつつ発表した。特に豊前の真宗私塾である東陽学寮に着目し、当寮が社会的な僧侶を多数輩出した背景に、東陽円月という塾長の影響があったことを論じた。以下、講演の内容である。

従来、真宗思想史研究の対象は「能化」や「勧学」、「教授」など、学僧や教団政治家に偏重してきた。かかる研究態度は各時代の最先端の議論を詳らかにしてきた一方、各地の一般僧侶や大多数の信徒の日常と真宗信仰との関わりを論じ切れていないという課題を残してきた。そうした課題克服を目的に、地域レベルから仏教を再考すべく着目したのが「私塾」である。
私塾は、江戸から明治・大正期にかけて1500校ほど存在した。主に武士階級に限定されていた藩校とは異なり、私塾は学ぶ者の身分や出身地を問わず、教育方針も自由であった。仏教系私塾については未解明の点が多いが、真宗私塾は少なくとも100校以上存在した。その詳細についてはそれぞれの私塾が有していた「学則」に着目することで窺い知ることが出来る。
真宗私塾の多くは、三業惑乱以降の能化制度の崩壊や安心研究の周密化、自由討究の公認化などを背景に誕生した。なかでも興味深い事例が豊前(現大分県)の私塾「東陽学寮」である。嘉永3(1850)年に創設され、東陽円月(1818-1902)の時代に発展した東陽学寮は、後に龍谷大学教授となる雲山龍珠や杉紫朗をはじめ、ハワイ開教の開拓者である曜日蒼龍、仏教済世軍の真田増丸、詩人の中原中也などを輩出した。他にも当学寮では社会実践に関与する門下が同時多発的に養成された。背景には、棄て子やハンセン病患者の救済、地域の干拓事業に携わった指導者円月の影響があった。
激動の近代において、国家奉仕を通して真宗教団の存在感を高める狙いがあった円月は、独自の「滅罪論」や「真俗二諦」を構築し、真宗の有用性を宗門内外へ説いた。そうした態度は社会派僧侶の養成に成功したものの、彼らの活動は常に国家主義的問題を内包するものであった。また、「人間の煩悩罪障は信心獲得後に断滅し、善が生じる」と説くことで、社会実践の根拠を導出しようとした円月の思想は、教団内で物議を醸すこととなった。
菊川氏は、独自の調査を通して入手した新出資料などを紹介しつつ、円月の知られざる異安心疑義事件の真相についても明らかにした。講演後、研究代表者の深川宣暢氏(龍谷大学教授)から、円月自身が社会性を帯びた背景などについて質問がなされた。菊川氏は、円月の修学経路などに言及しつつ、実学を重視する豊前の関学塾の影響などを紹介しつつ応答した。その他にも、私塾の財政基盤などについての質問がなされるなど、盛況のうちにセミナーは終了した。

 

講師の菊川一道氏

 

司会の内田准心氏(龍谷大学講師)

 

開催挨拶をする深川宣暢氏(龍谷大学教授)

 

 

 

 

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)、親鸞浄土教総合研究班 真宗学研究プロジェクト
ポスター
研究会案内チラシ「真宗私塾の僧侶養成」