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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】2020年10月30日(金)研究セミナー「日清戦争後の本願寺派に見る起業熱と財界連携」を開催しました

開催日時
2020年10月30日(金)
講演者

中西直樹氏(龍谷大学 教授)

 

司会

林行夫氏(龍谷大学 教授)

コメンテーター

近藤俊太郎(龍谷大学 非常勤講師)

 

2020年10月30日、中西直樹氏による講演「日清戦争後の本願寺派に見る起業熱と財界連携」が開催された。龍谷大学教授の中西氏は日本仏教史、特に近代における仏教者・教団の動向を対象として研究している。本講演では、明治20・30年代における本願寺派の経済的活動に注目し、その拡大に伴う宗教団体としての自己意識の変容について論じた。

 

コロナ禍にともなう感染防止のため、本研究セミナーはオンラインで開催された。中西氏の講演に続き、近藤氏のコメントを踏まえ、全員の討論が行われた。司会は林氏が担当した。中西氏の講演内容は以下の通りである。

 

僧侶は、営利を目的とする活動を行わない理念とその僧侶が属する組織を経済的に維持しなければならない事実とが様々な問題の起源である。宗教団体の資本的な基盤は、門信徒と末寺による納付金の他にその集団と連携する企業にある。それらの活動を表面的に本山と結びつかないために複雑なメカニズムが成立したが、それを明らかにすることが本講演の前半の目的であった。それに基づき、後半では本願寺の大法要に注目し、近代において可能になった大人数の移動による収入およびそれと関連した鉄道普及について分析を行った。

 

浄土真宗は、持戒などの理由で経済的な活動が戒められる教義的な背景がないため、浄土真宗系の企業を設立することが問題にならないと思われやすい。しかし実際に、本願寺派は他宗派と同様に僧侶と信徒との活動の区別を非常に慎重に考察し、起業の際にも注意を払った。したがって、営利を目的とした活動は門信徒の担当になり、僧侶がそれに表面的に関わらないように工夫された。その議論における代表的な事例は、「真宗本派生命保険」が「真宗信徒生命保険」と改名したことである。

 

19世紀末から20世紀にかけて、京都では多くの大イベントが控えられ、それに伴う人の移動による経済的な可能性は鉄道の普及にも繋がった。1895年には、第4回内国勧業博覧会のほか大谷派本山の落慶法要が行われ、1897年には本願寺派と大谷派が蓮如400年遠忌法要を勤めた。いくつかの鉄道会社はそれを契機に、大人数の参詣者をターゲットに運賃の半額切符や宝物館拝観割引などを提供した。その作戦は、それらの会社にとって重要な収益源になったとともに、新たな参詣規模をもたらした。

 

門信徒の宗教活動と僧侶側との関わり方は、以上の2例が示す形で変容してきたが、それに伴って仏教全般のあるべき姿のみではなく、本願寺派特有のあり方の議論にも影響を及ぼした。宗教的活動は、膨大な経済力との結びつきが徐々に強くなるにつれ、本願寺と「貧者」との繋がりが薄れてしまう心配などが疑問視される段階までに至った。本講演は、以上の事例のほか多くの史料を分析し、本願寺派の宗教的経済的活動の要素と関係を解明し、これからの本研究班内外における研究の新たな展望を提示した。

 

中西直樹氏(講師)

 

近藤俊太郎氏(コメンテーター)

 

オンライン参加者

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター 仏教史・真宗史総合研究班「近現代アジアにおける仏教の所在と社会的役割」研究班(代表:林行夫)
ポスター
中西氏研究セミナーポスター