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Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】第 6 回 沼田智秀仏教書籍 優秀賞受賞講演会「翻訳とは何か? 天台仏教関連文献英訳の40 年と今後の課題」

開催日時
2021年2月12日(金)17:00-18 :30
開催場所
Zoomによるオンライン開催
講演者

Paul Swanson氏(南山大学 名誉教授)

 

沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞は、特に西欧における仏教研究の発展を支援するために、2009年に設立された。毎年、英語で執筆された仏教学術書の中から優秀な作品が選定されている。2019年度は『Clear Serenity, Quiet Insight: T’ien-t’ai Chih-i’ Mo-ho chin-kuan』(全3巻、ハワイ大学出版)を上梓したPaul Swanson氏(南山大学名誉教授)が受賞した。

 

2021年2月12日、受賞を記念し、当センターではSwanson氏をオンライン講演会講師として招聘し、「翻訳とは何か?天台仏教関連文献英訳の40年と今後の課題」と題した記念講演会を開催した。Swanson氏の講演内容は以下の通りである。

 

冒頭、スワンソン氏は「この度、ライフワークである『摩訶止観』の翻訳研究で沼田賞を受賞できたことを大変光栄に思う」と述べた。『摩訶止観』に関しては現在、仏教伝道協会による註を付さない形式の翻訳も進められている。これに対して氏の翻訳書は註を多く用いている。註による解説によって『摩訶止観』の実像をより正確に翻訳できると考えたからであるという。

 

「翻訳とは何か?」について、氏は三つの側面があると論じた。まず、言葉や単語、熟語そのものの意味を把握すること。しかしそれだけでは十分でない。そこで重要となるのが二つ目のテクストの思想的・歴史的・社会的文脈を踏まえることである。個々の単語や熟語そのものの意味を単純に表すだけでなく、言葉の意味は前後の文脈によって決定されなければならない。例えば「Mary had a little lamb」という一文は、「メリーは子羊を飼っていた」と直訳可能だが、実際には「子羊を食べた」「子羊を騙した」「子羊を産んだ」という意味にもとれる。いずれが正しいかを定めるにはやはり背景の把握が不可欠となる。

 

最後に、翻訳のターゲットとする読者層を定めること。誰のための翻訳なのか、専門家か一般読者か。対象次第で翻訳方法は大きく変わる。これら三重側面を総合しつつ翻訳を行っている。

 

他にも翻訳の際は、一つの言葉で置き換えるだけでなく、複数の異なる視点の文章を加えることや、同じ言葉に可能な限り同一単語を使用する統一性、さらに経典の原文との擦り合わせなど、注意を払うべき点は多岐に渡る。上記を踏まえて、さらに不十分な際には註で解説を加えるのがスワンソン氏のスタイルである。講演のなかで氏は、翻訳が単純な言葉の置き換えでないことを、実際の『摩訶止観』や『法華玄義』の翻訳プロセスに沿って明らかにした。

 

講演に続き、龍谷大学教授の長谷川岳史氏がコメンテーターを務めた。長谷川氏は、一般的な文献研究と異なり、「全てを訳す」という意味において、翻訳は逃げが許されない点を指摘し、40年以上に渡り翻訳に取り組んで来たスワンソン氏の功績を讃えた。また、翻訳の三重側面に関して、中国語を翻訳しなかった日本仏教の特性を指摘して、日本国内の注釈書をもって中国仏教を把握しようとする研究姿勢に疑義を呈し、スワンソン氏同様、中国の文脈で読み解くことの重要性を強調した。

 

その後、参加者との活発な質疑応答を経て、最後にスワンソン氏より「今後は『法華玄義』の翻訳にも取り組みたい」と抱負が述べられ、講演会は終了した。

 

※当日の様子をYouTubeにて公開しました。

 

司会の嵩満也氏

 

仏教伝道協会理事長の桂紹隆氏

 

講演者のSwanson氏

 

講演の様子

 

コメンテーターの長谷川岳史氏

 

Swanson氏の受賞作品

 

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)
共催
公益財団法人仏教伝道協会
ポスター
沼田賞受賞講演会_Paul Swanson氏