Need Help?

Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【開催報告】2021年4月28日(水)研究セミナー「『考信録』の成立と本文に関する問題点」を開催しました

開催日時
2021年4月28日(水)
講演者

塚本一真氏(浄土真宗本願寺派総合研究所 上級研究員、京都女子大学 非常勤講師)

 

開催挨拶

那須英勝(龍谷大学 親鸞浄土教総合研究班真宗学研究プロジェクト 代表)

司会

内田准心(龍谷大学文学部 講師)

 

2021年4月28日、塚本一真氏による講演「『考信録』の成立と本文に関する問題点」が開催された。浄土真宗本願寺派総合研究所上級研究員の塚本氏は真宗教学史を研究しており、本講演では真宗儀礼のもっとも代表的な史料の一つである『考信録』に関する従来の見方の問題点について論じた。

 

コロナ禍にともなう感染防止のため、本研究セミナーはオンラインで開催された。内田氏の司会の下、塚本氏の講演に続き、那須氏のコメントを踏まえ、参加者全員での討論が行われた。塚本氏の講演内容は以下の通りである。

 

『考信録』は、玄智(1734-1794)という本願寺派僧侶によって書かれた真宗の百科事典といえる書物である。内容は幅広く、勤行・作法から教義と寺院までいくつかの視点から真宗の歴史を明らかにしている。このように重要な役割を占める『考信録』は、これまでの真宗辞典や儀礼に関する書物で数多く引用されてきた。一般的に利用されているテキストは『真宗全書』第64巻および『真宗史料集成』第9巻に収録され、国立国会図書館のデジタルコレクションからもアクセスできるほど、入手しやすい書物である。

 

しかし、龍谷大学図書館が所蔵する新たな刊本が発見されたことにより、『考信録』の再検討とともに解釈に関わる問題点が顕著になった。具体的には、『考信録』が完成された年と巻の数である。従来の通説では、1774年に完成され5巻からなる書物だと思われていたが、どれも訂正しなければならないことが明らかになった。

 

完成年について言えば、これまで知られていた刊本の中にも1774年以降の出来事に言及する項目がある。つまり、塚本氏とプロジェクトメンバーの分析によって、『考信録』の25箇所も1774年から1785年までに跨る年間を含んでいることが分かった。1774年の完成だと思われた理由は序にある「安永三年[…]慶證寺玄智景耀書[…]」という記述にあったが、本文を分析した結果、とりわけ6巻本で言う巻二・五・六においては1774年以降の項目が多い。

 

『考信録』の巻数は以前より確定されたのではなく、上述の『真宗全書』は5巻とし、『真宗史料集成』は6巻としている。巻の数は、出版に際しての物理的な便宜しか表さない可能性も考えられるが、『考信録』の諸刊本を比較すれば、内容にも大きな影響を与えていることが分かる。具体的には、項目の順番や説明の長さが違う場合があり、極端な例では他の刊本にみない項目も確認できる。さらに、比較的に近年に出版された『真宗史料集成』の弱点として上げられるのは、冠註や傍註が十分反映されているといえないことである。玄智自身は、長年に渡り『考信録』を書き直し、項目の補足作業もしたため、初期の2巻本から晩年の7巻本まで多種のバージョンが遺されている。この問題点と発見を踏まえ、『考信録』の構造と成立について再検討する必要があることが明らかになった。

 

これからの研究においては、玄智自筆の7巻本は作者本人の最終的な意図を示している『考信録』とまで言い得るため、特に重要な役割を果たすと思われる。塚本氏はこれから、『考信録』の実像を明らかにするために7巻本の翻刻および従来のテキストとのさらなる比較研究を進めると述べ、講演を終えた。

 

なお、本講演の内容について詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックした上、浄土真宗本願寺派総合研究所の研究紀要で発表された「『考信録』の成立と本文に関する問題点」(塚本一真・溪英俊・西村慶哉 共署)をご参照ください。
論文 http://j-soken.jp/files/jssk/jssk_14_08.pdf
ホームページ 浄土真宗本願寺派総合研究所

 

塚本一真氏(講師)

 

内田准心氏(司会)

 

那須英勝氏(挨拶)

 

オンライン参加者

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター 親鸞浄土教総合研究班 真宗学研究プロジェクト
ポスター
塚本氏研究セミナーポスター