Need Help?

Research Center for World Buddhist Cultures

世界仏教文化研究センター

活動内容

【2019年2月15日】 学術講演会 「熊野を「場」とする阿弥陀信仰」

開催日時
2019年02月15日(金) 17:30~19:00
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 東黌202教室
講演者

Markus Rüsch

熊野を「場」とする阿弥陀信仰

-そのアスペクトと教義の位置-

 

※ 日本語で行われます。気軽にお越しください。

 

問合先:龍谷大学大宮学舎西黌3階 能美研究室 (内線) 5309

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)基礎研究部門特定公募研究「大瀛『横超直道金剛錍』の研究」(代表: 殿内 恒)
ポスター
学術講演会「熊野を「場」とする阿弥陀信仰-そのアスペクトと教義の位置-」

【2019年2月14日】 学術講演会「近代天皇の聖性と神仏」

開催日時
2019年2月14日(木)15:00~16:30
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

【開催報告】

末木文美士氏

 

会場の様子

 

2019年2月14日(木)、末木文美士氏(国際日本文化研究センター名誉教授)によって「近代天皇の聖性と神仏」と題する講演が行われた。

末木氏は、まず、維新戦争時の風刺絵『当世三筋のたのしみ』を示した。そこには天璋院や和宮、徳川慶喜などが面白おかしく描かれており、明治天皇は子どもに扮し「をぢさんはやくあすこへつれてつておくれよ」と述べている。ここからは当時の庶民たちが、徳川家や皇族、そして天皇に対してどのような感情を抱いていたかがよく分かる。一方、明治時代以降の「御真影」は、天皇の威厳と聖性を広く人々に知らしめす役割を果たしたと言える。

次に末木氏は、前近代を「大伝統」、明治~第2次世界大戦までを「中伝統」、第2次世界大戦後を「小伝統」、20世紀以後を「脱近代」と区分し、それぞれに見られる基本構造を説明した。

「大伝統」の構造の特徴は、神仏と王権が緊張関係を保ち、その間に文化や生活が成り立っている点にある。王権の中でも「将軍―執権」⇔「院―帝―摂政」というように構造は重層化している。「小伝統」の構造の特徴は「顕」なる(表向き・対外的側面である)近代的言説(立憲国家)―儒教(教育勅語)⇔「冥」なる(裏向き・対内的側面である)神道(皇室)―仏教(臣民)という風にヒエラルキー的な点にある。そして、この構造の中にも「ホンネ」と「タテマエ」という重層構造が見られる。

「大伝統」において天皇は、王法と仏法そして国家的祭事を担う存在であった。また聖典に基づいた正しい礼(有職故実)を行い公家集団の中核としての存在でもあった。

明治~第二次世界大戦までである「中伝統」では、祭政一致の下、『太政官布告』で「神武創業ノ始」に戻ると述べる一方、そまでとは異なる全く新しい伝統が作られていった。柱とされたのは『大日本帝国憲法』『教育勅語』『皇室典範』『民法』の四つであった。この「伝統」の中で、一元化された体制と家父長的国家体制が整備されることになる。

『大日本帝国憲法』において、天皇は「万世一系」(第1条)とされている。『大日本帝国憲法』の解釈書である『憲法義解』では「瑞穂の国は、是れ、吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるへき地(くに)なり。宣(よろ)しく爾(いまし)皇孫(すめみま)就(ゆ)きて治(しら)せ)」(天壌無窮の詔勅)という『日本書紀』の記述を天皇の「万世一系」の典拠としている。そして『憲法義解』には「欽仰(きんぎょう)すべくして干犯すべからず」「法律は君主を責問するの力を有せず」とあり、これらを『大日本帝国憲法』における天皇の「神聖不可侵」(第3条)を捕捉している。憲法の第1条と第3条をよく見てみると、前者では天皇は統治責任があることがわかるが、後者では、一切の責任を問われないとも解釈できる。末木氏は、このような「万世一系」から「神聖不可侵」へは、飛躍があるのではないかと指摘する。

『大日本帝国憲法』「上諭」の「朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ卽チ朕カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進シ其ノ懿德良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ俱ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ……」からは、天皇が臣民に対して惠撫慈養を行う一方、臣民の翼賛も推奨していることを知ることができる。

果たして明治国家は宗教国家であろうか――。島薗進は「憲法は国家神道的な枠組の中で発布されるもの」とするが、そもそもまずここで問われるべきは近代の「国体」の重層的構造、つまり「顕」としての近代的言説と「冥」としての神道などとの関係である。また島薗は、国家的神話・儀礼の体系を前提としているが、それを「国家神道」という単純な枠組で捉えてよいのかと、末木氏は疑問を呈する。そもそも「国家神道」という概念に対してはさまざまな問題がある。広義の「国家神道」と狭義の「国家神道」に関して、研究者の立場による対立があり、また「国家神道」は否定されるべきものという前提がある。そして、この前提となっているのが西洋近代的宗教概念であるが、このことには問題はないのだろうか。

明治以降、「万世一系」による「神聖不可侵」は、国体の核心とされ、天皇は(対外的には)立憲君主つまり政治的支配者として君臨し、臣民との惠撫慈養・翼賛関係を持ち、さらに家父長的国家の父(あるいは母)としての役割を果した。また、国家的祖先祭祀者としての役目も担うという多面性が見られる。「国家神道」は、いわば新しい神道として整備された面がある。まず天照大神を至上神とする神々の体系化と皇室の祖先神のもとに序列化が行われたことが挙げられる。次に別格官弊社として湊川神社や東京招魂社などが建てられた。そして宮中祭祀が整備され、祭祀者としての天皇の役割が大きくなり、さらに「近代」への適合のために非呪術化、道徳化がなされた。

「中伝統」において、神道と仏教との関係はどのようなものだったのか。例えば、明治時代に行われた神仏分離であるが、これは本当に仏教界の意に反して神道側や明治政府によって強引に行われた事柄だったのだろうか。末木氏は、もともと神社と寺院のある程度の区別は進行しており、仏教側による協力も見られたと述べた。事実、興福寺などは自主的な転換を行っていたのである。

末木氏は最後に、今後の課題として、「大伝統」の重層構造が「中伝統」の一元構造に変化したのかを考えていく必要があると述べた。そのためには、江戸中期以後のナショナリズムの進展、つまり開明主義と攘夷主義という二つの方向と、将軍権力の理論的弱さから生じた尊王主義をもう一度考える必要があることを示唆した。

 

***************************

末木文美士氏 (国際日本文化研究センター名誉教授)

 

龍谷大学世界仏教文化研究センター共同研究プロジェクト「仏教と聖地に関する総合的研究-聖なる表象とは何か-」(研究代表者:楠 淳證 教授)主催の学術講演会を、下記の通り実施いたします。

「近代天皇の聖性と神仏」

 

「近代天皇の聖性と神仏」

講演者:末木文美士氏 (国際日本文化研究センター名誉教授)

 

・本講演会は一般公開、事前登録不要です。

・講演は日本語で行われます。

 

地図(西黌2階大会議室)

 

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター共同研究プロジェクト「仏教と聖地に関する総合的研究-聖なる表象とは何か-」(研究代表者:楠 淳證 教授)
ポスター
「近代天皇の聖性と神仏」ポスター

【2019年1月29日】 学術講演会「中世神話としての『諸神本懐集』」

開催日時
2019年1月29日(火) 16:45~18:15
開催場所
龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
講演者

〔開催報告〕

吉田唯氏

 

中世の『日本書紀』註釈や、両部・山王・吉田神道に関する神話や教説から成る歴史概念が、「中世神話」である。本講演は、この中世神話の視点から存覚(1290-1373)『諸神本懐集』を検討し、真宗史ではなく、日本思想史の中に同書を位置付ける試みといえる。具体的には、『諸神本懐集』を中心とする真宗聖教の中で、「神祇」がどのように捉えられたか、アマテラスとスサノオの扱いを中心に考察がなされた。

第一に、本講演は以下の章から成る。

1.「国譲り神話の比較」(『諸神本懐集』と『神本地之事』)

2. 日天子・月天子について

3.『諸神本懐集』内のアマテラス像

4.  室町期までの祖師イメージ

まとめ

5. 真名本『諸神本懐集』との比較

仮名本にのみ見られる記事

真名本にのみ見られる記事

 

以下、各章の概要を述べる。

 

  1. 「国譲り神話の比較」(『諸神本懐集』と『神本地之事』)

本章では、『諸神本懐集』と『神本地之事』それぞれの「国譲り神話」の記事を比較し、二書の関係性について再考が試みられた。

先行研究では、『諸神本懐集』は『神本地之事』の抄出としばしば主張される、しかし、二書の「国譲り神話」を比較すると、内容と叙述の形式の両面で相違が目立ち、したがって、『神本地之事』を『諸神本懐集』の底本とはいいがたい。付言すると、二書の差異は、アマテラスとスサノオの性格描写にも確認できる。

 

  1. 日天子・月天子について

本章では、存覚『諸神本懐集』に明らかにされる日天子・月天子の性質について考察が試みられた。

第一に、『諸神本懐集』の中には、次のような諸尊・諸神間の対応関係が示される。

①日神=アマテラス=日天子=観音=日本国の主=宝応声菩薩、

②月神=スサノオ=月天子=勢至=日本国の神の親=宝吉祥菩薩、

それによると、日天子は一方でアマテラス、他方で宝応声菩薩に相応すると説かれる。月天子は一方でスサノオ、他方で宝吉祥菩薩に相応すると説かれる。また『諸神本懐集』では、宝応声と宝吉祥の二菩薩は、阿弥陀の使いとされる。

以上の主張をまとめると、日天子と月天子は、アマテラスとスサノオの二神を阿弥陀仏に結び付け、浄土真宗の教えの中に取り込む媒介の役目を果たしたと考えられる。

 

  1. 『諸神本懐集』内のアマテラス像

本章では、『諸神本懐集』の「国譲り神話」記事に表されるアマテラス像を検討し、同神の性格について考察が試みられた。

『諸神本懐集』「国譲り神話」では、天岩戸にこもるアマテラスを「聊か幼児性を残すカミ」として描く一方で、そこからでた同神を「日本国の主」と評価する。このようなアマテラス=「日本国の主」という教説の背後には、天皇の存在が想定されていると思われるが、さらにその歴史的な背景として、親鸞の先祖、藤原氏(中臣氏)の先祖であるアメノコヤネが、かつてアマテラス=「日本国の主」に仕えたことがあり、一連の教説を通じて「神明を軽んじる」真宗イメージの払しょくをはかったとも推測される。

 

  1. 室町期までの祖師イメージ

本章では、室町時代までの祖師イメージということで、『恵信尼書状』や『法然伝記』の記述を取り上げ、真宗の祖師像について考察が試みられた。

結論からいえば、これら文献内の祖師の記述は、ある点で『諸神本懐集』と対照をなす。すなわち、前者では、親鸞や法然といった祖師と阿弥陀、観音、勢至の同体が説かれるが、アマテラス、スサノオといった神への言及は確認できない。逆に『諸神本懐集』では、上記三尊と神の同体を説くが、神と祖師の同体は説かない。換言すれば、神々は、『諸神本懐集』の中でこそ菩薩との同体を許されたが、その外では、それほど大きな影響力を持つことはなかった。

 

まとめ

まとめると、『諸神本懐集』を通じて、アマテラス、スサノオの二神、それら神への信仰は、真宗に導入された。無論、そこには他宗からの影響があったと考えられるが、ここで注意すべきは、神々自身の影響力も、あくまで限定的なものであったということである。すなわち、神々が、祖師や本尊阿弥陀と関係する、それらと同体視されることはなかった。その点に、真宗の神祇観の特質が確認できる。

 

  1. 真名本『諸神本懐集』との比較

本章では、先ず真名本『諸神本懐集』の書誌情報、先行研究の評価を確認し、引き続き、現存の仮名本と真名本の相違について紹介された。

 

*****************************

吉田唯(近畿大学非常勤講師、高野山大学密教文化研究所研究員)

 

中世神話としての『諸神本懐集』

 

司会:杉岡孝紀(龍谷大学農学部教授 世界仏教文化研究センター 親鸞浄土教総合研究班班長)

 

※一般聴衆歓迎。お気軽にお越しください。

 

問合先:龍谷大学白亜館3階共同研究室 075-343-3812 内線) 5832

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター親鸞浄土教総合研究班 真宗善本典籍研究プロジェクト『諸神本懐集』の研究班(代表:杉岡孝紀)
ポスター
中世神話としての『諸神本懐集』

【2019年2月7日】 第4回沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞記念講演会

開催日時
2019年2月7日(木)15:00~16:30
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

【開催報告】

 

ジャクリーン・ストーン博士

会場の様子

 

「沼田智秀仏教書籍優秀賞」は、特に西欧における仏教研究のさらなる発展を支援するために、2009年に設立された賞である。毎年審査委員会が開催され、公正な審議の上、英語で執筆された仏教学術書籍の中から優秀な書籍が選定されている。2017年度の受賞者は、Right Thoughts at the Last Moment: Buddhism and Deathbed Practices in Early Medieval Japan.(『臨終正念―中世初期の仏教と臨終の実践―』)を上梓したジャクリーン・I・ストーン博士(プリンストン大学宗教学部教授)に決定した。ストーン博士のメインの研究領域は中世日本の仏教である。また法華経、特に天台、日蓮宗の教義とともにそれらの現代における再定義についても研究を続けている。

2019年2月7日(木)、ストーン博士が「最後の念仏の力によって―平安・中世に見る臨終行儀―」と題して、受賞記念講演を行った。講演の中で、ストーン博士は仏教における臨終行儀とはいかなるものかについて解説し、日本においてこの儀礼がどのように伝播したかについて述べた。そして、善知識がこの儀礼で果たした役割についても言及した。

The Toshihide Nowata Book Award in Buddhism was established in 2009 in order to support the further development of the Buddhist studies especially in the Western world. The eining entry for rhe best academic Buddhist title of the year is selected by an independent committee. The awardee for fiscal year 2017 was Dr. Jacqueline I. Stone, Professor,Department of Religion, Princeton University, and her Right Thoughts at the Last Moment: Buddhism and Deathbed Practices in Early Medieval Japan. Dr. Stone’s chief research area is medieval Japanese Buddhism. And also, She is ongoing research the traditions of the Lotus Sūtra, particularly Tendai and Nichiren Buddhism, as well as their modern redefinitions.

On February 7, 2019, Dr. Stone held the special lecture whose title was “By the Power of One’s Last Nenbutsu: Deathbed Practices in Early Medieval Japan.” In her lecture, Dr. Stone explained what the deathbed practices 臨終行儀 in Buddhism is, and she mentioned how this practices progagated to many people in Japan. And also, Dr. Stone dealed with the role that Kalyāṇa-mittatā 善知識 played in this practice.

*****************************

 

ジャクリーン・I・ストーン博士 (プリンストン大学宗教学部教授)

沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞記念講演会

 

Right Thoughts at the Last Moment: Buddhism and Deathbed Practices in Early Medieval Japan (『臨終正念―中世初期の仏教と臨終の実践―』) で、2017年度沼田智秀仏教書優秀賞を受賞された、ジャクリーン・ストーン博士による講演会を下記の通り実施いたします。

 

「最後の念仏の力によって―平安・中世に見る臨終行儀―」

 

講演者:ジャクリーン・I・ストーン博士 (プリンストン大学宗教学部教授)

司会:嵩満也 (龍谷大学国際学部教授)

 

・本講演会は一般公開、事前登録不要です。

・講演は日本語で行われます。

 

【地図】(クリックで拡大)

 

 

お問い合わせ:075-343-3812

rcwbc.office@gmail.com

共催
龍谷大学世界仏教文化研究センター、公益財団法人仏教伝道教会
協力
龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)
ポスター
第4回沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞記念講演会

【2018年10月24日(水)】 学術講演会「冒険と明治日本」

開催日時
2018年10月24日(水) 13:15~14:45
開催場所
龍谷大学 深草学舎 顕真館
講演者

「冒険と明治日本」


講師:高本康子 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター共同研究員

 

司会:松崎憲道 龍谷大学宗教部

 

開催日時:2018年10月24日(水) 13:15~14:45

 

開催場所:龍谷大学 深草学舎 顕真館

 

問合先:龍谷大学大宮学舎 能仁研究室 内線5324

 

※一般来聴歓迎。

主催
龍谷大学 宗教部
共催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)
基礎研究部門特定公募研究(共同)プロジェクト 研究代表:岡本健資
ポスター
「冒険と明治日本」

【2018年11月22日(木)】 学術講演会「近世後期の京都文壇—妙法院宮真仁法親王とその周辺—」

開催日時
2018年11月22日(木) 15:00~16:30
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 北黌204
講演者

 

 

「近世後期の京都文壇―妙法院宮真仁法親王とその周辺―」

講師:飯倉洋一 (大阪大学教授)

 

司会:安井重雄 (龍谷大学文学部教授 世界仏教文化研究センター古典籍資料研究プロジェクト研究代表者)

 

日時:2018年11月22日(木) 15:00~16:30

 

場所:龍谷大学 大宮学舎 北黌204

 

※一般来聴歓迎。お気軽にお越し下さい。

 

問合せ:龍谷大学白亜館3階共同研究室

Tel:075-343-3812 内線:5832

*************************************

飯倉洋一氏

【講演会記録】

大阪大学教授、飯倉洋一氏による近世の京都の文化をめぐる講演。これまで注目されることの少なかった妙法院宮真仁法親王(1768-1805)とその周辺に焦点をあて、近世後期の京都文壇がどのようなものであったか議論された。

妙法院宮真仁法親王は、江戸時代の中~後期に京都東山の妙法院門跡をつとめた人物である。1768年、閑院宮典仁親王の第五子として生まれ、1769年に2歳で妙法院を継承する。1778年に後桃園天皇の養子となり、1786年、19歳で天台座主に任命される。その後、1795年に天台座主職を辞し、1805年、38歳の若さで没した

他方、真仁法親王は書画と詩歌に優れ、「地下」(じげ)の文化人・知識人とも積極的に交わったと伝えられる。本学術講演会では、真仁法親王の日記をはじめとする各種資料に記される文人または画師との交流の様子、関係性に焦点をあて、親王の周囲に形成された「サロン」、同時代の京都文壇の実態解明が試みられた。

 

講演に際し、飯倉氏より配布された資料の章立ては、下記の通りである。

 

Ⅰ 妙法院宮真仁法親王

Ⅱ 真仁法親王とそのサロン

Ⅲ 御直日記・妙法院日次記にみる文人・画師との交流

Ⅳ 蘆庵・秋成・宣長と妙法院宮

Ⅴ 『絵本太閤記』と妙法院宮官人

 

講演は、以上の章立てに沿って進行した。各章の詳しい内容は、次に述べる通りである。

先ず「Ⅰ 妙法院宮真仁法親王」において、東山天皇から妙法院宮真仁法親王に至る系図と、桃園天皇、後桃園天皇、光格天皇等、江戸中・後期に生きた天皇の激動の人生を紹介した後、真仁法親王の生涯、上記天皇との関係、「地下」の芸文家と盛んに交流した事実とその背景について概説が試みられた。

次に「Ⅱ 真仁法親王とそのサロン」で、真仁法親王が周囲からどのように理解されたか、身分を問わず優れた文化人や知識人と好んで交流した真仁法親王という、巷間に流布するイメージに関して検討が試みられた。

具体的には、①小山田与清『松屋筆記』文化十一年刊、②村田春海『織錦舎随筆』、③中島棕隠『錦西随筆』、④小沢蘆庵『六帖詠草拾遺』春、⑤本間游清『みみと川』といった資料に掲載される真仁法親王と様々な芸文家の交流に関する記述が論じられた。

続いて「Ⅲ 御直日記・妙法院日次記にみる文人・画師との交流」では、妙法院の当事者の記録に基づき、真仁法親王と様々な文人・画家の交流について解説がなされた。

具体的には、真仁法親王が20歳であった時の日記『御直日記』、および京都妙法院門跡の坊官の日次記『妙法院日次記』の内容を手がかりに、真仁法親王と円山応挙、小澤芦庵、伊藤若冲等の交流の様子が紹介された。

「Ⅳ 蘆庵・秋成・宣長と妙法院宮」では、京都に居を構えた文化人・知識人の中でも、歌人の小沢蘆庵、同じく歌人で国学者の上田秋成、本居宣長の三者に注目し、真仁法親王との交流がいかなるものであったか、様々なエピソードについて論じられた。

最後に「Ⅴ 『絵本太閤記』と妙法院宮官人」では、岡田玉山画、武内確斎著『絵本太閤記』の成立における妙法院宮関係者の役割について論じられた。

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)古典籍・大蔵経総合研究班 古典籍資料研究プロジェクト
ポスター
「近世後期の京都文壇—妙法院宮真仁法親王とその周辺—」

【2018年10月1日(月)】 学術講演会 「覚如上人と存覚上人の神祇観」

開催日時
2018年10月1日(月)16:45~18:15
開催場所
龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
講演者

【開催報告】

2018年10月1日(月)、林智康氏(龍谷大学名誉教授)による講演「覚如上人と存覚上人の神祇観」が行われた。講演では主に、覚如上人・存覚上人と親鸞聖人との神祇観の違い(乖離)について解説がなされた。

林氏は、覚如上人(1270~1351年)には、明らかに本地垂迹説の考え方が見られると述べる。覚如上人の言説からは、名神大社への崇敬の容認、さらには神仏習合的宗教性を基盤とした社会体制との接近や妥協が見られるという。

一方、存覚上人(1290~1373年)には、『諸神本懐集』『六要鈔』において、権社に崇敬することを勧め、実社に崇敬することを禁止するという「権社―神祇崇敬」「実社―神祇不拝」の立場をとっていることが見て取れるという。また日本を「神国」とする表現も見られる。

親鸞聖人の思想には、覚如上人・存覚上人のような本地垂迹説や神国思想のようなものは見られない。勿論、親鸞聖人においても、日本の神をどのように捉えるかは一つの問題としてあったと思われるが、日本の神の名を直接出すことはなかった。

林氏は、黒田俊雄氏の言説を引きながら、専修念仏は本地垂迹説や神国思想と基本的に相反したものであるにも関わらず、両者を統合しようとする限り、必然的に専修念仏の一向専修(専念)の純粋性が失われてくるのではないかと述べる。そして、そこには親鸞聖人が述べた真仮偽の三重判による論理は見られず、外教邪偽に対する考え方も妥協的になるのだと言う(当日配布レジュメ「真宗における神祇観―覚如・存覚・蓮如を中心として―」『存覚教学の研究』2015年参照)。

 

林智康氏

当日の会場の様子

覚如上人と存覚上人の神祇観

講演者:林智康(龍谷大学名誉教授)

 

司会:杉岡孝紀(龍谷大学農学部教授、世界仏教文化研究センター親鸞浄土教総合研究班班長)

 

※一般聴衆歓迎。お気軽にお越しください。

 

お問合せ:龍谷大学白亜館3階共同研究室 075-343-3812 内線:5832

 

 

主催
龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)親鸞浄土教総合研究班
共催
龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)教行信証班
ポスター
学術講演会 「覚如上人と存覚上人の神祇観」

【2018年7月16日】学術講演会「韓国における日本浄土教の研究動向」

開催日時
2018年7月16日(月) 16:45~18:15
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

金浩星氏

【開催報告】

2018年7月16日(月)、学術講演会『韓国における日本浄土教の研究動向』が開催された。はじめに、発表者の金浩星氏(韓国 東国大学校佛教大学佛教学部教授)によって、18~19世紀の韓国では「三門修行」として禅や華厳とともに念仏も行われていたが、現在は説法の内容等も禅が中心となり「念仏信仰」「浄土信仰」は忘却されつつあることが紹介された。また韓国の学界において現在、浄土思想の専門的研究者はほとんどいないということが付け加えられた。

そのような中、金氏は現在、浄土世界を信じられない現代人を説得する論理を、親鸞と一遍に見出し、考察を行っているという(『近年韓国に紹介されている日本の浄土仏教』南山宗教文化研究所 研究所報、第28号2018年)。また、金氏同様、日本の「浄土信仰」の研究を行っている元永常氏は、法然と親鸞の浄土思想の共通点と相違点を「修行」と「悟り」すなわち、禅仏教に近い立場から研究を行っているという。

韓国において浄土仏教の研究への関心はまだまだ希薄であるが、現在東国大学では、金氏の周りに学生が集い、研究会なども開催されており、今後新たな展開が予測される。

 

金浩星氏

会場の様子

 


学術講演会

 

韓国における日本浄土教の研究動向

金  浩 星 (韓国・東国大学校 佛教大学 佛教学部 教授)

 

司会・コメンテーター  杉 岡 孝 紀

(龍谷大学 農学部教授、世界仏教文化研究センター 真宗善本典籍研究プロジェクト 研究代表)

 

※申し込み不要、一般聴衆歓迎。お気軽にお越しください。

 

主催
龍谷大学 世界仏教文化研究センター(RCWBC)親鸞浄土教総合研究班 真宗善本典籍研究プロジェクト
ポスター
学術講演会「韓国における日本浄土教の研究動向」

【2018年6月8日】 第3回沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞記念講演会

開催日時
2018年6月8日(金) 15:00~17:00
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者
当日の会場の様子

当日の会場の様子

ジャネット・ギャッツォ博士

 

沼田智秀仏教書籍優秀賞は、特に西欧における仏教研究のさらなる発展を支援するために、2009年に設立された賞である。毎年審査委員会が開催され、公正な審議の上、英語で執筆された仏教学術書籍の中から優秀な書籍が選定されている。2016年度の受賞者は、Being Human in a Buddhist World: An Intellectual History of Medicine in Early Modern Tibet. (『仏教世界で人間であるために:近世チベットにおける医学の知性史』)を上梓したジャネット・ギャッツォ博士(ハーバード大学・神学大学院副院長、ハーシェイ仏教学講座教授)に決定した。ギャッツォ博士は、近世チベットの仏教の専門家でりながら、文化・社会・ジェンダーの問題も視野に入れ、幅広く研究をされている。

2018年6月8日(金)、ギャッツォ博士が「カテゴリー、メンタリティー、個人:仏教学の体に流れる歴史叙述の方法」と題して、受賞記念講演が行われた。チベット医学において用いられている仏教用語と現場の経験主義的な在り方がどのように関係し、またその背後には一体何があるかについて考察がなされた。

 


Being Human in a Buddhist World: An Intellectual History of Medicine in Early Modern Tibet (『仏教世界で人間であるために:近世チベットにおける医学の知性史』) で、2016年度沼田智秀仏教書優秀賞を受賞された、ジャネット・ギャツォ博士による講演会を下記の通り実施いたします。

(ポスター〔低画質〕。PDF版は下にあります。)

 

「カテゴリー、メンタリティー、個人:仏教学の体に流れる歴史叙述の方法」

講演者:ジャネット・ギャツォ博士 (ハーバード大学・神学大学院副院長、ハーシェイ仏教学講座教授)

 

司会・通訳:那須英勝 (龍谷大学文学部教授)

レスポンデント:亀山隆彦 (龍谷大学非常勤講師)

 

  • 本講演会は一般公開、事前登録不要です。
  • 講演・レスポンスは共に英語で行われますが、日本語訳または通訳を付ける予定です。

お問い合わせ:075-343-3812

rcwbc.office@gmail.com

 

龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室

 

共催
龍谷大学世界仏教文化研究センター
公益財団法人 仏教伝道教会
協力
龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)
ポスター
第3回沼田智秀仏教書籍優秀賞受賞記念講演会ポスター

左からギャッツォ博士、亀山隆彦氏(レスポンデント)、那須英勝氏(司会、通訳)

2018年5月11日(金)公開講演会「もう一人の三蔵法師の軌跡―不空三蔵とスリランカ・中国・日本―」

開催日時
2018年5月11日(金)15:00~16:30
開催場所
龍谷大学 大宮学舎 西黌2階 大会議室
講演者

【開催報告】

2018511日(金)、龍谷大学世界仏教文化研究センター(RCWBC)大蔵経研究班が主催、龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)と龍谷学会が共催の形で、公開講演会「もう一人の三蔵法師の軌跡―不空三蔵とスリランカ・中国・日本―」が開かれました。講師の王益鳴氏(Wang Yiming, 中国・華南師範大学教授)が密教史上の重要人物である不空三蔵について、そのスリランカ・中国・日本との関わりを述べたうえで、仏教と政治における深遠な影響を紹介しました。当日は、学内者だけでなく、海外の学者や社会人を含む大勢の方々が参加しました。

 

  

<講師 王 益鳴 氏>        <会場の様子>

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

王益鳴氏によって、日中の文献資料が取り上げられ、不空三蔵の経歴および彼が果たした日中仏教史上・政治史上における影響が紹介された。

 

一、スリランカと中国

法顕の『仏国記』、『梁書』、玄奘三蔵の『大唐西域記』、『宋史』、義浄の『大唐西域求法高僧伝』、周去非の『嶺南代答』、趙汝適の『諸蕃志』等々、古代中国の多くの史書や文献において、スリランカの記述が見られ、スリランカと中国の深い関係を知ることができる。特に、王氏が所属している華南師範大学の所在地広州市は、二千餘年以来中国の対外貿易の港として繁栄していて、不空三蔵との関係もかなり深いという。

 

二、不空にかかわる史料

不空三蔵に関わる史料は、主に円照の『代宗朝贈司空大辯正廣智三蔵和上表制集』、趙遷の『大辯正廣智三蔵行状』、飛錫の『碑銘』、賛寧の『宋高僧伝』などがあり、弘法大師空海から天皇への上表文にも関連記述が見られる。

 

三、不空三蔵とスリランカとの関わり

王氏は、不空三蔵とスリランカとの関わりについて、三つのポイントから紹介した。1、スリランカは実は不空三蔵の母国である。2、スリランカは不空三蔵が留学し、密教を広めた地である。3、入唐後に、師の遺言によりもう一度スリランカに戻り、巡礼・修行を行った。これは、不空三蔵の唐密における地位を成就させた決定的な要因である。

 

四、不空三蔵と中国との関わり

不空三蔵は鳩摩羅什・玄奘・義浄と並ぶ大訳経師であり、唐密を大成させた一方、政治・外交などの才能も生かし、唐の皇帝を補佐して「安史の乱」を鎮め、国に安らぎを与えた。弘法大師空海の『上新請来経目録表』では、特に不空三蔵の密法の国家鎮護の功績を絶賛されている。また、不空三蔵は中国の五台山における文殊信仰の繁昌をも促成したという。

 

五、不空三蔵と日本との関わり

日本では、古くから不空三蔵が転生し弘法大師空海になったという説があり、不空三蔵が非常に尊重されている。実際には、弘法大師空海は不空三蔵の孫弟子にあたる。王氏は、空海が密教の拠点を京都の東寺と高野山との二地に分かれて置いたことは、不空三蔵が長安の大興善寺と五台山に対する扱いを模倣したと推論し、また日本における仁王会催行も不空三蔵の影響によるものであると述べた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

公開講演会

もう一人の三蔵法師の軌跡

―不空三蔵とスリランカ・中国・日本―

王   益   鳴

(中国・華南師範大学 教授)

 

司  会  道 元  徹 心(龍谷大学 教授、世界仏教文化研究センター 兼任研究員)

挨  拶  楠    淳 證(龍谷大学 教授、世界仏教文化研究センター 基礎研究部門長、アジア仏教文化研究センター長)

講師紹介  若 原  雄 昭(龍谷大学 教授、世界仏教文化研究センター 大蔵経研究班長)

 

※本講演会は日本語で行われます。申し込み不要、一般来聴歓迎。

 

主催
龍谷大学 世界仏教文化研究センター(RCWBC)大蔵経研究班
共催
龍谷大学 アジア仏教文化研究センター(BARC)
龍谷学会
ポスター
「もう一人の三蔵法師の軌跡―不空三蔵とスリランカ・中国・日本―」ポスターPDF