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基礎研究部門 特定公募研究

【仏伝図と本生図の諸相 -多田等観将来「釈迦牟尼世尊絵伝」を中心に-】

基礎研究部門
特定公募研究(共同)
A Study of Various Aspects of Biography of the Buddha and Buddha’s Previous Lives:
About “Shakuson Eden”, a Tibetan Illustrated Biography of the Buddha Śākyamuni
in Tohkan TADA’s collection
2024年度~2025年度

研究代表者

岩田 朋子(龍谷ミュージアム教授)

共同研究者

能仁 正顕(文学部教授)
岡本 健資(文学部教授)
宮治  昭(龍谷大学名誉教授)
丹村 祥子(龍谷ミュージアムPJ研究員/大阪大学大学院(特任研究員)/相愛大学非常勤講師)
赤羽奈津子(龍谷大学非常勤講師)
天野  信(龍谷大学非常勤講師)

研究種別

共同研究

概要

 本研究は、西本願寺僧の多田等観(1890-1967)のもとに、1937年、ダライラマ13世の遺言に従い贈られた仏伝図「釈迦牟尼世尊絵伝」(以下、「釈迦絵伝」)について、既に収集した諸資料の検討及び、追加の関連資料収集、そして、関連が新たに明らかとなった複数の仏伝図について、基礎調査と情報収集並びに検討を行うものである。
多田等観は、学術調査隊「大谷探検隊」の一翼として、1912年に西本願寺第22世宗主の大谷光瑞師の命により、チベットの仏教文化を学ぶため、現地へ留学僧として派遣された。1923年3月に帰国するまでおよそ10年間、インド以来の部派仏教・大乗仏教双方の戒と律を受け継ぎ、正式なチベット仏教僧となり僧院生活を送りながら研鑽を積んだ。チベットにおける政治的宗教的最高指導者であったダライラマ13世から直接の教授を受け、帰国後、本学、東洋文庫をはじめ国内の諸学術研究機関と協力しつつ、将来したチベット大蔵経および仏教美術資料などの整理と研究、その成果公表につとめ、1960年に日本学士院賞を受賞している。
 「釈尊絵伝」(綿布着色/花巻市博物館蔵)は、17世紀のチベットで制作されたと考えられる。釈尊の生涯が約120場面にわたって描かれた仏伝図であり、アジア全体でみても非常に大部であり稀有な仏伝図である、しかし、現状、その認知度は国内においてすら低く(実際、コロナ禍直前に国際研究会「日本チベット学会」で本図を取り上げた際にも驚嘆の反応が多くみられた)、研究は未だ途上にある。本研究は対象の中心に本図に置く。
 さらに、これまで「仏伝図」の作例収集を進めるなかで、釈尊の過去世物語を描く「本生図」の事例も収集する機会を得た。今回の共同研究では、これら新出作例を含めてさらなる検討を進めたいと考えている。あわせて、従来行ってきた、未整理の東洋文庫所蔵多田等観資料(未発表の翻訳研究ノートなど)の調査・整理を継続して行うこととする。



【真宗聖教の文献学的研究―世親『無量寿経論』をモデルケースとして―】

基礎研究部門
特定公募研究(共同)
Philological Study of Sacred Shin Buddhist Texts: Vasubandhu’s Wuliangshoujing-lun as a Model Case.
2024年度~2025年度

研究代表者

内田 准心 (文学部准教授)

共同研究者

佐々木大悟(短期大学部教授)
壬生 泰紀(政策学部講師)
上野 隆平(龍谷大学非常勤講師)
辻本 俊郎(大阪経済法科大学アジア研究所客員研究員)
高務 祐輝(京都大学非常勤講師)
都河 陽介(龍谷大学非常勤講師)
北山 祐誓(龍谷大学非常勤講師)

研究種別

共同研究

概要

本研究は、七祖聖教を中心とした浄土真宗の教理史における重要文献を対象として、精緻なテキストクリティークを施し、当該文献の形成された時点の歴史的視点を導入することで、より厳密な文献理解を目指すものである。そのために今回は、世親『無量寿経論』に焦点を当て、批判的校訂テキスト及びそれにもとづく訳註を作成する。それにより、世親『無量寿経論』、それを受けた曇鸞『往生論註』、さらには『教行信証』をはじめとする親鸞の著作群、それぞれの浄土教思想解明のための基礎資料を提示する。



【大乗仏教とイスラームの心のあり様をめぐる考察―煩悩と愛のはざまで―】

基礎研究部門
特定公募研究(共同)
Reflections on the State of Mind in Mahayana Buddhism and Islam: Between Earthly Desires and Love.
2025年度~2026年度

研究代表者

佐野 東生(国際学部教授)

共同研究者

嵩  満也(国際学部教授)
横山  剛(筑波大学助教)
Sepideh Afrashteh(日本学術振興会博士研究員)

研究種別

共同研究

概要

 本研究は、仏教とイスラームをめぐる接点をさぐるため、悟り:救済に向けた心のあり様について比較考察する。仏教では大乗仏教に至る過程で、煩悩と呼ばれる心の態様が悟りのため克服されるべきとされた。イスラームではその一部が人間的欲として本来否定的には捉えられなかったが、イスラーム神秘主義に至って禁欲的立場からそれらは否定的に捉えられた。一方で悟りに向けた心のあり様としての愛について、大乗仏教で念仏による阿弥陀仏の慈悲と人間の仏への愛の念、イスラームでも神秘主義の祈りを通じ神と人の相互的愛として肯定的に捉えられた。本研究では、煩悩と愛のはざまに揺れる人間と神仏の慈悲による救済について両宗教の接点を示し、共生の手がかりとする。



【『大乗大義章』の書誌学的研究】

基礎研究部門
特定公募研究(個人)
The Research on the Bibliograph of “Dasheng da yizhang ”大乗大義章“

2025年度

研究代表者

都河 陽介(龍谷大学非常勤講師)

研究種別

個人研究

概要

 本研究は、4~5世紀の初期中国仏教における仏教僧と中国知識人との思想論争に着目し、仏教擁護論を支えるレトリックと論理の背後にある仏教理解を分析することを研究の射程とする。本プロジェクトにおいては、その一環として4~5世紀に中国で活動した廬山慧遠と鳩摩羅什の問答集である『鳩摩羅什法師大義』(別名:『大乗大義章』)の古写本を収集し、基礎的な書誌情報の整理および校訂テクストの作成を目的とする。



【13世紀西洋の托鉢修道会における知恵概念の基礎的研究】

基礎研究部門
特定公募研究(個人)
A Fundamental Study of the Concept of Wisdom in the Mendicant Orders of the 13th Century

2025年度

研究代表者

山口 雅広(文学部准教授)

研究種別

個人研究

概要

 現代は多文化・多宗教の共存が求められる時代である。仏教の世界的展開をこの文脈に置くとき、キリスト教との比較研究は、両宗教間の相互理解や対話を深化させる重要な基盤となる。特に西洋中世思想研究の分野では、今後取り組まれるべき主題も残るとはいえ、この比較研究が多様に進められてきた。
 本研究は、この未開拓の主題の1つとして、13世紀西洋の托鉢修道会、特にフランシスコ会の思想家ボナヴェントゥラに注目し、「知恵(sapientia)」概念の特質を解明する。その際、存在論や認識論に関する近年の研究成果を反映させ、その理解を深めることを目指す。さらに、この知恵概念を仏教思想と比較し、世界宗教としての仏教とキリスト教の関連性を探る新たな基盤を提供することをも目指す。