基礎研究部門 特定公募研究
【雑誌メディアにみる20世紀日系アメリカ仏教の民間史的研究】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
Historical Research on Japanese American Buddhism in the Twentieth Century through Buddhist Magazines
2020年度~2022年度(延長)
研究代表者
菊川 一道(世界仏教文化研究センター 客員研究員)
研究種別
個人研究
概要
本研究は、20 世紀北米における日系アメリカ仏教の諸相を民間史の視点から解明することを目的とする。日系アメリカ仏教はすでに120 年以上の歴史をもつ。その実態は、鈴木大拙など、一部著名な仏教系知識人や、北米仏教団(Buddhist Churches of America)の沿革史に焦点をあてる研究によって明らかにされてきた。本研究はそれら先行研究を参照しつつも、より民間仏教徒たちを主な題材とすることで、仏教系知識人の実態とは異なる、マジョリティにとっての仏教の内実を明らかにする。そのために、仏教会所蔵の雑誌メディアに着目したい。申請者は2019 年度より、Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)のScotto Michel 教授と雑誌Berkeley Bussei(1939-1956)に関する共同研究を開始した。Berkeley Bussei は仏教青年会所属の信徒が中心となって作成した機関紙で、戦前戦後の仏教会の動向を伝える数少ない貴重資料の一つである。Berkeley Bussei の読解と分析を行いつつ、必要に応じて申請者が入手したその他の米国発行の仏教系雑誌との比較も行う。
【美徳理論の観点からの食倫理学の基礎的研究】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
A Basic Study on the Problems of Food Ethics from the Perspective of Virtue Ethics
2022年度
研究代表者
山口 雅広(文学部准教授)
研究種別
個人研究
概要
「食倫理学(Food Ethics)」と呼ばれる研究領域に、「美徳理論(Virtue Theory)」あるいは「徳倫理学(Virtue Ethics)」と呼ばれる倫理学説を適用し、哲学的次元ならびに宗教的次元において、その解決の道筋をつける。
【菓子で学ぶ松尾芭蕉と『奥の細道』
「芭蕉」「奥の細道」の名を冠した菓子を用いて】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
earn Matsuo Basho and “Okun-no-Hosomichi” from Japanese sweets
Using sweets named “Basho” and “Oku-no-Hosomichi”
2022年度
研究代表者
部矢 祥子 (龍谷大学 非常勤講師)
研究種別
個人研究
概要
「芭蕉」や「奥の細道」の名を冠した菓子、芭蕉が詠んだ俳句に因む名を冠した菓子を調査・収集し、菓子を通して、江戸時代の芭蕉と『奥の細道』を身近なものとして学び理解する。
【妙多羅天女信仰における山姥、奪衣婆、鬼子母神の習合】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
Syncretism of Datsueba, Yamauba, and Hariti in Myōtara Tennyo Worship
2022年度
研究代表者
坂 知尋 (龍谷大学世界仏教文化研究センター 博士研究員 )
研究種別
個人研究
概要
本研究では、妙多羅天女信仰における山姥、奪衣婆、鬼子母神の習合に注目する。
山姥は日本の昔話や物語、説話などに登場する山に住む奇怪な女である。その表象や性格付けは多様で、人を喰う恐ろしい鬼婆、救いの手を差し伸べる協力者、超人的能力を持つ子供の母親などとして描かれる。善と悪、豊穣・多産と破壊という両義的な性格を有することも指摘されている。
奪衣婆は11世紀ごろから日本の仏教説話や経典に登場しはじめ、三途の川のほとりで死者の衣を剥ぐ鬼婆として描かれる。初期文献ではとりわけ重要な人物として描かれているとは言い難く、描写も簡潔である。しかし、時代が下るにつれ尊格や性格が様々に解釈されてく。江戸時代になると、女性の救済者として設定されたり、子育てや安産を含む種々の利益を授ける尊格として熱烈な信仰を集めたりといった展開を見せた。
鬼子母神は元々インドの尊格で、自分の子供を養うために人間の子供をさらい喰い殺していたが、釈迦に出会い改心し、子供の守護神また安産の神として祀られるようになった。
本来、山姥と奪衣婆、鬼子母神は別人格であるが、妙多羅天女信仰においては山姥的要素と奪衣婆的要素、そして鬼子母神的要素を併せ持つ弥三郎婆という人物が登場する。
先行研究において山姥と奪衣婆の習合は度々指摘されてきた。また、仏教の恐ろしい女神として奪衣婆と鬼子母神の名前が挙げられることはままある。とはいえ、この三者の習合について具体的な事例に注目してなされた研究はなく、漠然とした指摘のみにとどまっている。本研究では、妙多羅天女信仰を事例として、山姥と奪衣婆、鬼子母神がどのように重ね合わされ信仰の展開をうながしたのか検討する。
【真宗聖教の文献学的研究―世親『無量寿経論』をモデルケースとして―】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
Philological Study of Sacred Shin Buddhist Texts: Vasubandhu’s Wuliangshoujing-lun as a Model Case.
2022年度~2023年度
研究代表者
内田 准心 (文学部専任講師)
研究種別
共同研究
概要
本研究は、七祖聖教を中心とした浄土真宗の教理史における重要文献を対象として、精緻なテキストクリティークを施し、当該文献の形成された時点の歴史的視点を導入することで、より厳密な文献理解を目指すものである。そのために今回は、世親『無量寿経論』に焦点を当て、批判的校訂テキスト及びそれにもとづく訳註を作成する。それにより、世親『無量寿経論』、それを受けた曇鸞『往生論註』、さらには『教行信証』をはじめとする親鸞の著作群、それぞれの浄土教思想解明のための基礎資料を提示する。
【大瀛『横超直道金剛錍』の研究】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
The Study of the “Ocho jikido kon-go-hei” by Daiei
2020年度~2022年度(延長)
研究代表者
殿内 恒 (文学部教授)
研究種別
共同研究
概要
本研究は、近世の教団史の中でもとりわけ教団全体を巻き込み、教団史上最大の法論に位置付けられる「三業惑乱」を研究対象とするものであり、わけても、この論争に終止符を打ったと評される大瀛(1759-1804)の『横超直道金剛錍』(1801 刊)の研究を進めることを目的としている。研究方法としては、本書の諸異本の中の善本を用いてその本文を読解し、現代語の試訳の作成ならびにその内容の註釈的研究を行い、本書における論点の整理、問題点の抽出を行う。また、最終的にはそこで蓄積された成果を書籍として刊行することも企図している。
【仏伝図の諸相 -多田等観将来「釈迦牟尼世尊絵伝」を中心に-】
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
A Study of Various Aspects of Biography of the Buddha: About “Shakuson Eden,” a Tibetan Illustrated Biography of the Buddha Śākyamuni in Tohkan TADA’s collection
2020年度~2022年度(延長)
研究代表者
岩田 朋子(龍谷ミュージアム准教授)
研究種別
共同研究
概要
本研究は、所謂釈迦八相図(降兜率天・托胎・誕生・出家・降魔・成道・初転法輪・涅槃)以外にも多くの場面を表す「仏伝図」の事例を収集し、検討するものである。研究対象の中心は、「釈迦牟尼世尊絵伝」(綿布着色/花巻市博物館蔵、=以下「釈尊絵伝」)である。この「釈尊絵伝」は、17世紀のチベットにおいて制作されたもので、釈尊の生涯が約120場面にわたって描かれている。アジア全体でみても非常に大部な仏伝図である。ただ、その存在は余り知られていないのが現状である。
この「釈尊絵伝」には、初転法輪以降の衆生教化の物語が全体の約8割を占め、釈迦八相図の場面ではほとんど表されることの無い仏教徒が登場する。そこには、釈尊の現在世における教化物語を描写することを目的とした、この絵伝の特徴的な意図が読み取れる。さらに、釈尊絵伝よりも場面数は減少するものの20場面以上で釈尊の生涯を表す仏伝図の多くが、17世紀前後、東アジアでほぼ同時多発的に各地域で編纂された「釈迦一代記」なるものに影響を受けている点を整理したい。
そこで、ガンダーラ仏伝浮彫にもその源流を辿り、関連する仏伝文献や律文献を合わせて比較検討するとともに、各地域の「釈迦一代記」にも触れながら考察を加えたい。