仏伝図の諸相 -多田等観将来「釈迦牟尼世尊絵伝」を中心に-
基礎研究部門
特定公募研究(共同)
A Study of Various Aspects of Biography of the Buddha: About “Shakuson Eden,” a Tibetan Illustrated Biography of the Buddha Śākyamuni in Tohkan TADA’s collection
2020年度~2022年度(延長)
研究代表者
岩田 朋子(龍谷ミュージアム准教授)
研究種別
共同研究
概要
本研究は、所謂釈迦八相図(降兜率天・托胎・誕生・出家・降魔・成道・初転法輪・涅槃)以外にも多くの場面を表す「仏伝図」の事例を収集し、検討するものである。研究対象の中心は、「釈迦牟尼世尊絵伝」(綿布着色/花巻市博物館蔵、=以下「釈尊絵伝」)である。この「釈尊絵伝」は、17世紀のチベットにおいて制作されたもので、釈尊の生涯が約120場面にわたって描かれている。アジア全体でみても非常に大部な仏伝図である。ただ、その存在は余り知られていないのが現状である。
この「釈尊絵伝」には、初転法輪以降の衆生教化の物語が全体の約8割を占め、釈迦八相図の場面ではほとんど表されることの無い仏教徒が登場する。そこには、釈尊の現在世における教化物語を描写することを目的とした、この絵伝の特徴的な意図が読み取れる。さらに、釈尊絵伝よりも場面数は減少するものの20場面以上で釈尊の生涯を表す仏伝図の多くが、17世紀前後、東アジアでほぼ同時多発的に各地域で編纂された「釈迦一代記」なるものに影響を受けている点を整理したい。
そこで、ガンダーラ仏伝浮彫にもその源流を辿り、関連する仏伝文献や律文献を合わせて比較検討するとともに、各地域の「釈迦一代記」にも触れながら考察を加えたい。