Research Center for World Buddhist Cultures(RCWBC)

世界仏教文化研究センター

ホーム 研究 世界仏教文化研究センター > News > 【報告】「世親の釈軌論ー経典を解釈することについてー」

【報告】「世親の釈軌論ー経典を解釈することについてー」

2025.03.06

 龍谷大学大宮キャンパスでは2025年2月20日(木)に「世親の釈軌論―経典を解釈することについて―」が開かれた。講師は上野牧生氏(大谷大学准教授)で、コメンテーターは本学講師の上野隆平氏、司会進行は本学講師の北山祐誓氏がつとめた。今回の研究セミナーでは、上野(牧)氏が解読を進めている世親『釈軌論』に基づく視座から、『浄土論』をめぐる世親の経典解釈方法について紹介した。

講演中の上野(牧)氏

 まず上野(牧)氏は、『釈軌論』の経典解釈方法に注目し、世親が経典を解釈するにあたって目的・要義・語義・次第・論難答釈の五項目に分けて説明する特徴があることを指摘する。その中でも経典の主題を分節し、各節の目的を導出しようとする要義の項目は、『普賢行願論』『十地経論』にも実例が確認でき、多くの世親著作で適応されている経典解釈方法であった。そして、上野(牧)氏は要義の解釈方法が『浄土論』にも適応されており、『浄土論』に説かれる五念門は『無量寿経』を解釈するときの要義であることを主張した。その根拠として五念門や二十九種荘厳功徳成就などには、梵本『無量寿経』と対応する文言があることを指摘し、礼拝・讃嘆・作願・観察・回向の配列も『無量寿経』そのものに依っていると説明された。最後に上野(牧)氏は、世親による解釈の肝は、『無量寿経』五念門からなる実践を勧奨する仏説と受け止める点にあり、従来の研究が指摘するような諸他の瑜伽行派文献に基づき一般的な瑜伽行の実践を『浄土論』に述べたのではないことを指摘し、講演を閉じた。

司会の北山氏とコメンテーターの上野(隆)氏

 講演後、参加者を交えて活発な質疑応答が行われた。特にコメンテーターの上野(隆)氏からは、本講演で指摘された梵本『無量寿経』の箇所以外にも、『浄土論』に対応する文章が指摘され大いに議論が盛り上がった。

講演護の全体写真