【報告】シンポジウム「システム論から考えるスクールカウンセリング」
2025.03.31
2025年3月23日(日)10:00より本学大宮学舎東黌301教室においてシンポジウム「システム論から考えるスクールカウンセリング」が開催された。司会の赤津玲子氏(本学心理学部教授)による趣旨説明の後、村上雅彦氏(広島ファミリールーム)より基調講演「学校臨床におけるSCの役割」がおこなわれた。

「学校」には大別すると教育システム、生活システム、保健システムの3つがあり、問題に応じてそれぞれが解決の役割を担っている。しかしこれらのシステムには人間関係に関する議論がなく、対人関係が抜け落ちているのではないかと村上氏は指摘する。学校での活動は、「勉強・ルール・人間関係」に判別できる。その中、「勉強」は教育システム、「ルール」は生活システムにて扱うことができるが、人間関係はどこで扱うのかは判然とせず、方策は各個人に委ねられているのが現状である。学校のシステムは縦はよくできているが横が弱く、結局は上下関係で決まってしまうことが多い。その問題を支援することができるのがスクールカウンセラーではないかと村上氏は述べる。

さて、スクールカウンセラーの立ち位置は以下の4に分類される。
1.セラピスト(心理療法)
2.アドバイザー(助言を行う)
3.コンサルタント(チーム構成、役割分担や配置について考える)
4.ディレクター(すべての責任者)
注目すべきは「3.コンサルタントとしての役割」である。1つの問題を解決するためには、個人単位ではなく1つのプロジェクトチーム(学校)で対応すること、責任者を決める、役割を決めることが重要であると村上氏は述べ、講演を締めくくった。
講演ののち、シンポジウム「チーム学校として取り組むために」として3名のシンポジストが発題を行った。
荒井久美子氏(京都府・京都市スクールカウンセラー)は、スクールカウンセラーとしての取り組みとして、教職員との連携についてコンサルテーションを中心に発題された。荒井氏は最後に教職員との円滑な関係性構築、そしてそのための普段からの取り組みの重要性を述べられた。

大石直子氏(灘中学校・灘高等学校スクールカウンセラー)は、私立中高一貫校でのスクールカウンセリング、特に私立中学校に従事する経験からの発題をされた。大石氏は主要5教科がマジョリティ、副教科がマイノリティという進学校におけるドミナントストーリーを脱却するオルタナティブストーリーの実例を示しつつ、教職員との関係性構築の重要性について述べられた。
西山達二氏(滋賀県スクールカウンセラー)は、どのようにして学校に参入していくべきかというテーマに発題された。西山氏は究極的にカウンセラーは「自分がその場にいて楽になること」が大切だという。そのためには、とくかく「顔を売る」すなわち教職員とのコミュニケーションを積極的に(ただし節度を持って)図って行くことが何よりも肝要であると主張された。
そののち、指定討論としてパネリストとともに村上氏、吉川悟氏(本学心理学部教授)が登壇され、フロアを含めて闊達な意見交換が行われシンポジウムは締めくくられた。