【報告】第六回中日蔵学研究セミナー 北京で開催
2025.11.25

記念写真
2025年10月25日(土)、中国蔵学研究センターが主催し、本センターが共催する、第六回中日蔵学研究セミナーが北京・中国蔵学研究センターにて開催された。本学教授能仁正顕氏、佛教大学名誉教授松田和信氏をはじめとする、本センター大蔵経総合研究班メンバー10名が出席し、うち7名が研究発表を行った(以下、発表順による)。
能仁 正顕氏(文学部教授)「金剛般若経と金剛般若経論頌:筏の譬喩と密意(saṃdhi/dgongs pa)」
志賀 浄邦氏(文学部教授)「Jaina views introduced in the Tarkajvālā and Prajñāpradīpaţīkā」(TarkajvālāおよびPrajñāpradīpaţīkāにおいて紹介されるジャイナ教徒の見解)
吉田 哲氏(経済学部教授)「Shes bya gsal byedにおける実有に関する注釈の特徴」
早島 慧氏(国際学部准教授)「Akṣarāśisūtraの引用と変遷」
西山 亮氏(非常勤講師)「Research Trends and Issues in the Satyadvayavibhaṅga」(『二諦分別論』研究の現状と課題)
岩尾 一史氏(文学部教授)「Constructing Borders and No Man’s Land between the Old Tibetan Empire and Tang China」(古代チベット帝国と唐帝国の間における国境と無人地帯)
本会議前日の10月24日(金)には、日本側参加者のための歓迎会が開かれ、中国蔵学研究センター総幹事(=センター長)鄭堆(ダムドゥル)氏が敬意・祝意を表す哈達(カタ)を日本側参加者全員に贈った。


歓迎会 カタを贈る様子


開会挨拶を行う鄭堆(ダムドゥル)総幹事(左)と能仁正顕教授(右)


会場の様子(右写真1列目(左→右):能仁正顕氏、松田和信氏、志賀浄邦氏、吉田哲氏、岩尾一史氏、早島慧氏)
10月25日(土)会議当日の詳細について、中国蔵学研究センターホームページに詳しい記事が掲載された。以下、当該記事のリンクと日本語訳を付する。
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http://www.tibetology.ac.cn/2025-10/29/content_43260574.htm
【記事日本語訳】
第六回中日蔵学研究セミナー 北京で成功裏に開催された
10月25日、第六回中日蔵学研究セミナーが北京において盛大に開催された。本会議は中国蔵学研究センター主催、日本・龍谷大学世界仏教文化研究センター共催で、日本の龍谷大学、佛教大学、武蔵野大学、および中国社会科学院、青海民族大学、中国蔵学研究センター等諸機構より、20余名の専門家・学者が集まり、「漢蔵梵仏教文献と思想研究」と「チベット仏教の歴史文化と蔵医学研究」との二大テーマをめぐり、深く交流して討論をした。
中国蔵学研究センター総幹事(=センター長)鄭堆(ダムドゥル)氏が開幕挨拶において、日本・龍谷大学との間の、十数年間にも及ぶ協力歴史を顧みた。2009年に招へいされ、龍谷大学において訪問研究を行ったことを回顧し、この経験が2011年両機構の正式的な学術交流協力協定の締結の堅固な基盤となった。鄭堆(ダムドゥル)氏が、この協力協定の下で、中国蔵学研究センターからはすでに累計十余名の学者を日本へ派遣し、訪問研究を展開して豊かな成果を挙げたことと、両機構が『五百頌般若経』梵文校勘事業においても画期的な成果を取得したと指摘した。鄭堆(ダムドゥル)氏が、中日蔵学研究セミナーは2010年初開催して以来、最初は僅か6名の学者が参加したが、今は20余名の学者まで発展し、研究分野も広がりつつ、すでに両国チベット学界の、システム化・ブランド化した重要なプラットホームとなっていると示した。
日本・龍谷大学文学部教授能仁正顕氏がご挨拶において、中国蔵学研究センターの厚い接待に対し深く感謝の意を表し、2012年に初めて北京国際チベット学研究セミナーに参加したことを顧みた。大会の壮大な様子は今も生々しく、中国側の学者たちとは学術的友情を築いたという。能仁氏がまた、両機構が今の安定な交流システムを築いたのは、2017年龍谷大学にて開催した第三回日中蔵学研究セミナーの後、双方共同で「二年ごとに学術交流研究セミナーを開催する」ように提言したことにあると語り、今後はチベット学・仏教学・梵(文)学などの分野において双方の研究協力をより一層進めて深化させたいという願いを熱く話した。
日中学者が二大テーマをめぐり深層的交流を展開し、研究討論した内容は梵文写本、仏教文献、チベット史、チベット仏教教義、チベット医学、仏教図像学およびフィールド調査などの多くの分野を覆い、報告言語は中国語、日本語、英語、チベット語を含め、研究国際化の特色が現れている。
日本側学者が文献学における深い造詣を見せた。能仁正顕教授が『金剛般若経』中「筏の比喩」への巧みな解析、志賀浄邦教授が「思択炎論」などの文献を通して仏教及びジャイナ教の思想交渉への整理、吉田哲教授がチベット伝注疏の思想の特質への探究は、いずれも、日本学学者の多言語文献解読における特別な優位性を表している。
中国側学者の研究は著しく豊富的・先端的な特質を呈する。李学竹研究員がチベット現存の『現観荘厳論』梵文写本の紹介と考察は中国側が梵文文献研究分野における最新な進展を見せた。録目草副研究員の「『四讃広釈』中未詳偈頌来源考述」は堅実な文献考証の能力を示した。看召本研究員の「蔵医の視角から生命の形成過程を語る」と、力毛措研究員の「蔵医身心療法について」における、チベット医学の生命形成と身心療法に対する叙述は、会議参加者の学者たちの濃厚な興味を引いた。特に提示すべきなのは、「90後」「95後」(1990年、1995年以降生まれ)の青年学者の登場が本会議の一大ポイントとなった。彼等の良好な学術訓練と先端的な研究視角から、チベット学研究の代々相伝されたあふれる活力が見えてくる。
中国蔵学研究センター宗教研究所所長拉先加研究員が閉幕式の結語において、両方学者が漢・蔵・梵典籍における読解優位性を充分に発揮させ、文献学・宗教学・歴史学や医学などの多学科の研究方法を用い、深度のある対話と観点の接触刺激を展開し、双方学術成果の交流と共有を効果的に推進して、未来の日中仏教学研究の深層的な交流を重要な啓発をも提供したと指摘した。拉先加氏は、本会議は四大特色を呈したと指摘した。一には、多言語文献の互証互校は研究視野を広げた。二には、学際的(研究)方法の交差的活用が研究議題の広さと深さを増強した。三には、歴史考証と現実関心の結合は、チベット文化の伝承に対し新しい道を提供した。四には、青年学者の積極的な参加はチベット学研究の代々相伝のあふれる活力を表し、研究の持続的な発展を保障している。本会議は日中双方のチベット学および仏教学分野における学術的共同認識を深めただけでなく、未来の継続的協力のための堅固な基盤をも築いた。
本研究セミナーは中日蔵学界の、文献整理・思想研究・歴史文化などの分野における豊富な成果を展示し、両国チベット学研究の深層的発展を推進するために新しい活力を注いだ。参会した学者たちが一同、協力して努力しつつ、中日蔵学研究セミナーを両国蔵学界の高レベル、常態化した学術交流のメインなプラットホームにする意志を表した。
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次回の第七回日中蔵学研究セミナーは中国蔵学研究センターと本センターの協定により、2年後龍谷大学にて開催する予定である。