【報告】「浄土世界の思想地図—浄穢の議論と弥陀仏国の格付け—」
2026.01.06
2025年12月19日(金)、龍谷大学大宮キャンパスで「浄土世界の思想地図—浄穢の議論と弥陀仏国の格付け—」と題する研究セミナーが開かれた。講演者は大正大学専任講師の工藤量導氏、司会・進行を本学非常勤講師の都河陽介、コメンテーターを本学教養教育科目准教授の内田准心がつとめた。本研究セミナーでは、工藤氏が進めている浄穢の議論および阿弥陀仏国の格付けに関する研究発表が行われた。

工藤氏は、中国仏教における仏土論の形成過程を、①浄土の相対化、②浄土の安定化、③浄土の中国化という三段階に区分して描き出し、従来の研究では十分に注目されてこなかった仏土論の発生要因とその展開過程について再規定を試みている。まず「浄土の相対化」においては、釈迦の仏土が娑婆世界と表裏一体の「同処」にあることを強調する浄穢の議論を検討し、他方仏土との対比を通じて浄土の意義が次第に明確化されていく過程を明らかにしている。次に「浄土の安定化」では、古形の仏土論から仏身仏土論への展開を解明し、応身土の概念が創出されることによって、他方仏土が仏土論の枠組みに取り込まれ、浄土思想の安定的基盤が築かれた点を指摘している。最後に「浄土の中国化」では、極楽世界を含む他方仏土が中国仏教においていかに浄土として受容され、浄土化が進展していったのかを、思想史的観点から解明している。

本研究は、弥陀信仰を持たない学僧の文献を主たる分析対象とし、極楽浄土に限定せず、他方仏土全体を視野に入れて浄土化の過程を跡づけた点において、きわめて重要な発表であった。とりわけ、羅什訳『維摩経』および『法華経』に基づく浄穢の議論を起点として、古形の仏土論が中国の思想的土壌の中から創出されたことを示し、仏土論の源流を明らかにした点は、今後の仏土論研究の前提を確立する上で重要な指摘である。また今後の課題として、石窟壁画や造像銘などの視覚資料を通じて、他方仏土の浄土化に関する一般的イメージがどのように定着していったのかを検証し、思想史における仏土論の展開を捉え直す必要性が示された。

講演後、参加者を交えて活発な質疑応答が行われた。特にインド仏教と中国仏教における仏土論の違いに関して多角的に検証していく必要があると指摘され、大いに議論が盛り上がった。
