Research Center for World Buddhist Cultures(RCWBC)

世界仏教文化研究センター

ホーム 研究 世界仏教文化研究センター > News > 【報告】研究セミナー「瑜伽行派の経の修習法」

【報告】研究セミナー「瑜伽行派の経の修習法」

2023.06.22

 2023年6月20日(火)、大谷大学 名誉教授の小谷信千代氏より「瑜伽行派の経の修習法」と題した講演会が開催された。講演では、世親によって著された『浄土論』において、瑜伽行派の経の修習法に基づいて、往生して仏にまみえるための修行法が示されていることが語られた。

                 小谷 信千代氏

 『浄土論』に示される五念門の一つ、観察門では止観という心を落ち着けるための瞑想修行に基づいて、仏国土の様相や経の文言を一つ一つ個別に観察すること、対してそれらを一語に集約して観察すること、という二通りの観察法が示されている。修行の最初には、まずあらゆるものから広く学び、そしてだんだんと一点に絞って観察していく。最終的にはこの二つのあり方を併せ持つようになっていくが、ここに瑜伽行派の修行法の特色を見ることができると語られた。

               上野 隆平氏と佐々木 大悟氏

 講演後、コメンテーターをつとめた上野隆平氏(龍谷大学 講師)は『浄土論』中にあらわれる「如実に」という語について触れた。小谷氏は「如実に」とはつまり「正しく」という意味であるが、それはつまり経の教えに適うものであるということであり、それもまた瑜伽行派の経に対するあり方そのものであると述べた。またフロアからは、世親が『浄土論』を著した目的に関する話題が上がり、さまざまな人に浄土の有り様をわかりやすく伝えたいという思いがあったのではないか、と語られた。

                 記念写真

 『浄土論』に描かれる修行者は、仏教に精通した出家者などではなく、凡夫の菩薩である。『浄土論』は、そんな修行者に対して、まず具体的に浄土のイメージを湧かせ、そこに生まれたいと願う心を持たせようとしている。小谷氏から、このように受け止めやすい形で浄土を理解することが重要であると語られ、本講演会が締め括られた。