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【報告】研究セミナー「寺院聖教の調査とその方法―真宗・仏教研究者が古写本を活用するために―」

2023.07.24

 2023年7月19日(水)、野呂 靖氏(龍谷大学准教授)より「寺院聖教の調査とその方法―真宗・仏教研究者が古写本を活用するために―」と題した講演会が開催された。資料のデジタル化が進む現代、実物の資料を調査することにどのような意義があるのだろうか。長年、資料調査に携わってきた経験をもとに、野呂氏から具体的な調査方法をはじめ、寺院に所蔵された資料群である「聖教」研究の未来が語られた。

                    野呂 靖氏

 資料について「何が」書いてあるかに注目が集まりがちであるが、「何に」書かれているのかということも重要であり、資料調査によって明らかになる装丁や紙の種類といった本文以外の情報から実に多くのことが見えてくるという。たとえば紙を削って行われた修正箇所は実物に触れることではじめてわかり、それによって資料の成立過程が見えてくる。一つの資料が完成されるまでには複雑なプロセスがある。資料調査はそのプロセスを解明し、一つの寺院に集積された「聖教」の全体像を把握することを可能にする。

 また調査時の持ち物や服装、資料の扱い方などの具体的な方法についてもレクチャーされ、資料や資料を保存する寺院に対する研究者の適切な向き合い方が語られた。

   司会の内田 准心氏(龍谷大学准教授)

 講演後、フロアから、資料調査と資料のデジタル化の未来について話題があがった。資料のデジタル化によって誰もが資料にアクセスできるようになる。そうして社会的な関心を呼ぶことで、資料を守り繋ごうという意識が高まる。デジタル化もまた重要な動きであると、野呂氏は語った。

 

 寺院に所蔵された資料を閲覧することは、同時に資料を傷めることでもある。適切な方法で、そして敬意をもって資料を調査し、「聖教」を次代へ継承していくことが研究者の役割である。本講演会を通して、資料に対する研究者の姿勢が示された。

                    集合写真