【報告】「ジェンダーの視点で語る仏教者の社会実践」
2024.06.03
龍谷大学大宮キャンパスでは2024年5月17日(金)に「ジェンダーの視点で語る仏教者の社会実践」と題する研究会が開かれた。研究会ではまず、アンチャリー・クルターチ氏International Network of Engaged Buddhists(INEB、エンゲージド・ブッディスト国際ネットワーク)による基調講演が行われ、続いて三善恭子氏(公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会総務部長)、枝木美香氏(認定NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク事務局長)、ラングナー寺本・ベッティーナ清真氏(浄土真宗本願寺派極楽寺衆徒、建築家)による活動報告が行われた。休憩後のディスカッションでは、島薗進氏(東京大学名誉教授、龍谷大学客員教授)がコメンテーターをつとめ、嵩満也氏(龍谷大学教授)がファシリテーターをつとめた。
開会の挨拶では嵩氏が本研究会の目的について、仏教的な社会倫理を現代社会においていかに具体化していくのか、さまざまな視点から捉え直し、研究を進めることであると述べた。次にアンチャリー・クルターチ氏が「積極的平和の実践―ジェンダー平等と社会的包摂の行動―」というテーマで基調講演を行った。氏は、INEBの基本原則や活動分野を述べ、アジアの国々における具体的な活動について紹介した。また、INEBがその活動を通して、ジェンダー平等と社会的包摂を目指していることに言及した。
次に、日本国内で活躍する三善氏、ラングナー寺本氏、枝木氏の3名が活動報告を行った。三善氏は「立正佼成会の社会活動とジェンダーの視点」と題し、立正佼成会が仏教の教えに基づいた社会貢献活動を行っており、特に女性エンパワーメントや同性パートナーシップ制度の導入に取り組んでいることを報告した。
枝木氏は、アーユスの設立や方針、さらにはその国際的なネットワークなどについて紹介した後、国内外における具体的な活動について報告した。例えば、タイではアーユスがHIV/AIDSの啓発活動や陽性者の自助グループ支援に携わっている。このほかトルコ・シリア大地震、ウクライナ危機、ガザ危機などへの支援活動も行っている。そして、継続して注視してきた課題として、ジェンダー平等や社会における女性エンパワーメントなどについてワークショップを開催し、国内外の学術フォーラムなどで議論を続けてきたことを報告した。
最後にラングナー寺本氏は、お寺が地域コミュニティにおいて重要な役割を果たしていることを強調し、包摂的な社会を実現するための建築プロジェクトについても説明した。
以上3名の活動報告を受けて、島薗進氏がそれぞれの発表内容を総括した上でコメントを行い、問題提起した。氏は、現代仏教の社会倫理におけるジェンダーの視点の重要性を強調し、仏教が持つ社会変革の可能性について述べた。また、嵩氏の司会のもと、登壇者の間でジェンダー平等と社会的包摂の実現に向けた具体的な活動について活発なディスカッションと意見交換が行われた。また、会場およびオンライン参加者から多くの質疑も寄せられた。本研究会は、仏教の社会倫理におけるジェンダー視点の重要性を再確認し、今後の研究と実践の方向性について多くの示唆を与えるものとなった。