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【報告】「浄土真宗、ハンセン病、近代日本における「死者の市民権」」

2024.06.24

那須教授

龍谷大学大宮キャンパスでは2024年6月10日(月)に「Buddhism, Hansen’s Disease, and ‘Necro-citizenship’ in Modern Japan(浄土真宗、ハンセン病、近代日本における「死者の市民権」)と題する国際ワークショップが開かれた。講演者はジェシカ・スターリング氏(ルイス・アンド・クラーク大学宗教学科長・准教授)で、司会は本学教授の那須英勝氏がつとめた。

 スターリング氏は、主に仏教は「生活宗教」であるというアプローチに基づき、人々が実際に生活するなかで、仏教がどのように日常生活と関係し、あるいは影響を与えているかを研究課題としている。氏の最初の著書は、浄土真宗の信者の家庭環境における宗教の役割を探るもので、儀式や経典などに限定せず、日常生活のなかでの仏教の関わりを論じたものである。

ジェシカ・スターリング氏

 今回の講演では、現在進行中の研究プロジェクトである「ハンセン病と仏教の関係」の諸問題を取り上げた。まず、日本のハンセン病患者の人権問題や、20世紀の日本政府によるハンセン病政策について説明した。次に、具体的な事例を提示しながら、日本政府の隔離政策が患者やその家族に与えた影響や、近代日本におけるハンセン病患者の扱いがどのように変遷してきたかを説明した。

 このほか、仏教関係者がハンセン病患者の諸問題を改善するためにどのような活動をしたのかについても説明が行われた。具体的には、西日本のさまざまな仏教団体がハンセン病療養所で行っているボランティア活動の紹介である。こうした活動は患者の社会的孤立を和らげるのみならず、患者の「死後の市民権」を獲得するための助けとなっている点を強調した。

質疑応答の様子

 講演後、現地及びオンライン参加者を交えて活発な質疑応答が行われた。今回のワークショップを通して、日本社会におけるハンセン病やマイノリティーの問題などの解決のために、仏教関係者の役割の重要さが再確認された。