【報告】「現代日本の仏教寺院:宗教的廃棄物、再利用、そして活性化」
2024.07.02
龍谷大学大宮キャンパスでは2024年6月13日(木)に「Japanese Buddhist Temples: Religious Waste, Reuse and Revitalization(現代日本の仏教寺院:宗教的廃棄物、再利用、そして活性化)と題する国際ワークショップが開かれた。講演者はヤアン・ボーロプ氏(オーフス大学〔デンマーク〕、文化社会学部・宗教学科教授)で、司会は本学教授の那須英勝氏がつとめた。今回のワークショップでは、ボーロプ氏が現在進めている研究プロジェクトの一環として、日本の仏教寺院と持続可能な開発を目標に焦点を当てた内容を紹介した。
まずボーロプ氏は、我々が廃棄物と物質過剰の時代に生きており、それは環境への負荷だけでなく、人間としてのあり方についても影響を及ぼしているという。また、様々な宗教活動から廃棄物も発生しているが、このような「宗教的廃棄物」はデリケートなテーマであるため、普段、無視され、あるいはその取り扱いが難しいとされる。日本の事例から言えば、こうした「宗教的廃棄物」には、大規模なお祭りの際に廃棄されるプラスチックや紙製品、お寺にお供えされた食品の余剰物、そして不要になった仏具、仏像、仏壇などが含まれる。さらに、都市化や過疎化などによる、いわゆる「無縁社会」における後継者不足や世俗化の拡大の影響で、使用されなくなった宗教的建築物もある。
今回の講演では、ボーロプ氏が現在進めている日本の「宗教的廃棄物」に関係する研究プロジェクトで得られた成果の一部が紹介された。まず、日本の「宗教的廃棄物」の例として、さまざまな形で存在する「余剰寺院」(空寺、無住寺院、兼務寺院、廃寺など)と、それらが発生する社会的、宗教的な事情について説明した上で、廃棄物の再利用と活性化を目指した国内におけるいくつかの事例についても紹介した。具体的な事例として、京都の「ゴミゼロ」運動や四国地方で行われた「ゼロウェイストタウン」の取り組みを紹介し、仏教の哲学や宗教的儀式が廃棄物管理にどのように役立つかを説明した。同じく、寺院での太陽光発電の利用や「エコ寺院」としての取り組み、食品の再分配プロジェクトなどの実例を通じて、仏教が持続可能性に貢献する具体的な方法を示した。なお、「宗教的廃棄物」の適切な管理のあり方とは何か、またその規則をいかに制定すべきなのかについて話した。
最後にボーロプ氏は、持続可能な開発目標や観光仏教、体験型仏教などの新しい取り組みが、いかなる形で仏教寺院の存続に寄与できるのか、その展望を述べた。そして、ボーロプ氏は社会的資本の重要性を強調し、地域社会との連携が寺院の再生に不可欠であると結論付けた。講演の後、現地及びオンライン参加者を交えた活発な質疑応答が交わされ、持続可能な社会に向けた仏教の役割についての理解が深められた。