【報告】「東アジア仏教における韓国仏教の特質」
2024.08.06
龍谷大学大宮キャンパスでは2024年7月18日(木)に「東アジア仏教における韓国仏教の特質―華厳思想を中心に―」と題する特別講演会が開かれた。講演者は金天鶴氏(韓国・東国大学校教授)で、司会進行は本学准教授の野呂靖氏がつとめた。今回の講演会では、金氏がかねてより研究を進めていた韓国の華厳思想について、東アジア仏教という国際的な関係性の観点から内容を紹介した。
まず金氏は、従来の仏教研究が仏教流伝の過程を中国から韓国、韓国から日本へと伝わったとする一方向的な流れによって説明していることに注意し、文化や思想の流れは旋回を含めて考えるべきであると述べる。そして、韓国仏教の思想史を①元暁、②義相、③元暁・義相以後(統一新羅時代)、④高麗・朝鮮時代の4つに区分し、それぞれの人物や時代におけるキーワードを紹介しながら特徴を説明した。また、韓国華厳の流れは、理論的な完結性を通じて華厳の普法に導く元暁の教学と、特殊概念を創出し展開しながら形成された実践的な義相学派という2つの柱からなっており、その後の人々も2つの柱を中心としつつ、他思想との融合や日本仏教との交流の中で思想を展開したと評価する。
講演後、参加者を交えて活発な質疑応答が行われた。特に元暁・義相以降の韓国華厳については、新しい思想の萌芽が見えないが、元暁・義相の教学をいかに継承していくかという課題に重きが置かれ、仏教の教判論等の課題と元暁・義相の教学の関係を結びつけていく傾向が見られると説明された。会場では、韓国華厳の流れを包括的に把握した上で中国や日本の仏教思想史を学んでいく必要性が再確認された。