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【報告】国際連続講演会「東アジア仏教の交流:宋・鎌倉・室町時代に杭州圏と日本とのつながりを考察する」

2023.06.28

龍谷大学では、2023年5月22日~27日(月~土)にかけて、龍谷大学、花園大学およびアメリカのアリゾナ大学の共催で「東アジア仏教の交流:宋・鎌倉・室町時代に杭州圏と日本とのつながりを考察する」というテーマで国際ワークショップが行われた。本ワークショップは、中国の杭州地方(江南)に発展した仏教に焦点を当てつつ、それがいかにして東アジア地域における仏教の発展の契機となったのか、その過程を解明することを目的としたものであった。

嵩 満也氏
嵩 満也氏

 本ワークショップの一環として、龍谷大学世界仏教文化研究センターの共催で、2023年5月22日(月)にBernard Faure氏(コロンビア大学教授)、2023年5月23日(火)にJohn Jorgensen氏 (独立研究者)、最後に2023年5月26日(金)にJin Y. Park氏 (アメリカン大学教授)に公開でハイブリッドの基調講演をして頂いた。司会と進行は本学教授の嵩 満也氏が担当した。各講演者の講演の概要は以下の通りである。

 第1回目の2023年5月22日(月)の講演者であるBernard Faure氏の講題は「圓仁から圓爾へ二都物語」であった。氏は、第3代天台座主で入唐八家でもあった圓仁および鎌倉時代中期の臨済宗の僧であった圓爾を事例に、8世紀から13世紀にかけて、東アジアン地域における仏教について考える際、どうしても無視できない中国の杭州地方と日本仏教の中心地であった京都の間で行われた文化的な交流について講演した。氏によれば、現存する当時の資料などから、入唐入宋した京都の天台僧らが、当時、世界で最も大きな都市であった杭州市とその仏教文化に圧倒されたことが分かる。中世時代に、仏教を中心とする杭州と京都の間で行われたこうした文化的な交流は、日本仏教のみならず、日本の美術、文学、医学・医療をはじめ、疫病などに関する民俗信仰までを形成させたのである。最後に氏は、これまでの歴史の中で語ることはなかった、このような文化的な交流を解明するためには、国を超えた東アジアという広い地域間の交流について更なる研究が必要になることを指摘して講演を終えた。

Bernard Faure氏
Bernard Faure氏
John Jorgensen氏
John Jorgensen氏

 次に2023年5月23日(火)の講演者であるJohn Jorgensen氏は「無著道忠の作品にみる妙心寺と徑山寺」という講題に沿って、従来の杭州圏と日本間の仏教的な交流史の中であまり注目されてこなかった無著道忠を取り上げ、彼が残した数多くのテキストに見る妙心寺と徑山寺の描写について講演した。とりわけ氏は、禅宗における最も重要な文献学者である無著と黄檗宗との関係、次に無著が捉えた日本の臨済宗妙心寺派の大本山の寺院である妙心寺と中国五山の一つである徑山寺、最後に無著が形成した禅学と禅宗美術について詳細に講演した。

Jin Y. Park氏
Jin Y. Park氏

 最後に2023年5月26日(金)にJin Y. Park氏は「性と法系統:韓国禪宗仏教の尼僧」という講題で、韓国の禅宗という特定の宗派における比丘尼とジェンダーの問題について講演した。従来、特定の宗教あるいは国・社会における女性と宗教の関係、そして女性による入門の社会的な背景などの視点から、宗教とジェンダーの絡み合いについて研究されたきたが、韓国の特定の仏教宗派における女性について論じる研究は少なかった。そこで氏は、韓国禪宗仏教における尼僧は、いかなる状況のなかで仏門に入り、そしてそれを指し示すどのような歴史的な資料が残されているのか、さらには韓国禪宗仏教における尼僧の研究は、韓国禪宗仏教そのものを理解するためにどのように役に立つのかについて講演した。

 上記3氏による講演では、京都の寺院などに残された杭州仏教文化に関連する様々な資料が紹介され、そうすることで杭州地域と京都間の仏教的な交流について新たな光を当てることができたと言える。なお、各回の講演会の時、参加された大学院生を中心に、多くの参加者・聴衆から幅広い内容について活発な質疑がなされ、充実した議論も行われた。