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【報告】研究セミナー「10世紀における中日仏教交流」

2025.11.06

2025年10月31日(金)、龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室にて、世界仏教文化研究センター 基礎研究部門 大蔵経総合研究班主催による研究セミナー「10世紀における中日仏教交流——恵心僧都源信と四明尊者知礼を中心に——」が開催された。講師は中国浙江工商大学東アジア仏教文化研究センター所長の悟灯氏で、コメンテーターは龍谷大学先端理工学部教授の道元徹心氏がつとめた。天台宗典編纂所編輯員の吉田慈順氏の司会の下、活発かつ有意義な意見交換が行われた。

悟灯氏

 講演中、悟灯氏は10世紀から11世紀にかけての中日天台教学交流の背景を概観してから、日本天台の源信(947〜1017)が質問し、趙宋天台山家派の知礼(960〜1028)が回答するという内容を記録した『答日本国師二十七問』を取り上げ、その第一・三・六・七・九・十一・十三問答に対する詳細な解読を通して、当該文献の資料的価値はもとより、思想史的な観点や文化交流の観点から『答日本国師二十七問』の研究意義を評価した。『答日本国師二十七問』は、単なる仏教学的な問答や教義の解答にとどまらず、時代と地域を超えた思想的な対話であり、中日仏教思想の展開を連貫させる架橋的文献であるという。

吉田氏(左)、道元氏(右)

 質疑応答では、『答日本国師二十七問』の二系統の本文の存在が話題となり、日本側の質問とその意図を十分に汲み込んでいない中国側(知礼)の解答との齟齬から、当時の日本天台や趙宋天台における教学研究の異なる傾向を推察することが可能である。また、源信は四明知礼が代表する山家派との交流のかたわら、山外派の奉先源清(生没年未詳)とも交流を持っていた。こうした文化交流の成果に対する多角的な研究は、その意義が再確認された。

記念撮影