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【報告】「大乗荘厳経論の梵本をめぐる近況とその周辺」

2024.07.09

 龍谷大学大宮キャンパスでは2024年6月14日(金)に「大乗荘厳経論の梵本をめぐる近況とその周辺―ポタラ宮所伝の新出貝葉写本ほか―」と題する公開研究会が開かれた。発表者は加納和雄氏(駒澤大学准教授)・李学竹氏(中国チベット学研究センター研究員)で、司会進行は本学教授の能仁正顕氏がつとめた。今回の研究会では、加納氏と李氏が調査を進めているポタラ宮所伝の新出『大乗荘厳経論』写本について、すでに発見された写本との比較を通して内容を紹介した。

会場の様子

 まず加納氏は、今までに発見された『大乗荘厳経論』の写本および関連する注釈書を紹介し、それぞれの資料が発見された地理的・時代的関係性について説明した上で、今回発見されたポタラ宮写本は、文字等の形状からおそらくカトマンズで作成されたものと述べる。また、ポタラ宮写本によってもたらされる成果として、これまで発見された写本の欠落箇所梵文が回収できることと、従来発見されていた写本の異読を回収できることの2点をあげ、今後期待される研究進展の方向性についても指摘した。このほかにも、ポタラ宮写本と同じ函に所蔵されていた詳細不明の3つのテクストについても言及し、その中の1つが『大乗荘厳経論』の冒頭部の破損を補うために追加で写された写本であることを紹介した。ほかの2つについても、現在解析を進め、これらの写本が同一の函に納められていた理由についても検討すると述べた。

 また、共同研究者である李氏もオンラインで参加し、加納氏の発表にコメントした。李氏は、ポタラ宮写本の由来について、1950から60年代にゴル寺とシャル寺からラサに写本を集めていたことと関係することを指摘した。また、李氏の所属する中国チベット学研究センターにも『大乗荘厳経論』の写本が存在するため、それらの写本が他の写本とどのような関係性にあるのか調査を継続していくと述べた。

 講演後、参加者を交えて活発な質疑応答が行われた。今回の研究会を通して、『大乗荘厳経論』のテクスト研究やそのテクストが置かれた周辺情報に関する問題の解決のために、研究者の国際的な相互交流の重要性が再確認された。

記念写真